ケンタロー

哀れなるものたちのケンタローのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
5.0
『無知の知』いや、無知も智か…うん。ムッチムチがくんずほぐれつバッコンバッコンで♡ なんかこう正に体当たりって感じ。

見てる途中、ソクラテスの説く『無知の知』が思い浮かんだ。と同時に無知なるベラが常識とか慣習や社会的なシステムなど多くの枷にも囚われることなく、観念的にも縛られずに智さと強さを身に着けて真理に近づいていく姿にどんどん魅了されていく。

しかし、なんという素晴らしいバランス感覚の作品だろう! 難解さは無く解りやすい。だいぶシニカルではあるけどユーモアも散りばめられてるので、エログロ表現は確かにあるんだけど、印象としてはすごく優しく丁寧な作りだ。エンタメとアートのバランスがすこぶるイイのだ。

※※ 以下ネタバレ含みます!※※


現実世界で女性が男性と男社会から受けてきた抑圧や差別の歴史について過去から現代に至るまでを章ごとに順立てて観客に見せてくれている。学ぶこと、自由を得ること、働くこと、自立することといった時代ごとの障壁がベラの進む物語の中に丁寧に織り込まれていく。ベラはそれらに対して無邪気にそして果敢に挑み続ける。まず自覚し(無知を知る)、そして問題を見つけ改善を行い乗り越えていく様は爽快だ。エマ・ストーンの演技も素晴らしいが、クソ野郎のダンカンを演じるマーク・ラファロの出来がピカイチだと思う♪

娼館のマダムの言葉「やがて光と叡智が訪れる」がとても印象的だった。

ただ、本作の優れていると思える点は単純に女性解放思想に偏った作品ではないことがラストの描き方で感じられたことだ。女性が解放されたとしても男性と同じように成ってしまうのではしょうがないということ。リベンジや逆転ではないさらなる高みへの成長と改善が求められているワケだ。このあたり、よしながふみ原作『大奥』にも似ている。

女であれ男であれ、人間としての本質こそが問われている。実にシニカルなんだけど、エンドロールに映る壁や窓の背景、アレって女性器や男性器に見えるものを意図的にコラージュしてるよね? 最後の最後は明らかに脳みそだし…。

結論、人間って哀れだなぁ…ってことなんだと解釈したけど、この映画観終えると「だって人間だもの」って、みつをっぽく言って苦笑いしてる自分が居たわ(笑)