このレビューはネタバレを含みます
今では絶対に作れない映画。
それゆえ、不謹慎ながら他では味わえないカルトな魅力を帯びてる。
亀や猿やネズミは本当に殺しているらしいし、レイプシーンも執拗だし、役者同士が本当にセックスを始めちゃったらしいし、もうカオス。
皮肉にも「動物を殺しているならば、原住民のことも本当に火炙りにしているのでは……」と思わせる力まで持ってしまっている。
正直、食人族の異様な風習をベースにした気持ちの悪い怖さを期待していたので、4人の目線での怖さを感じにくかった点には肩透かしを食らった。
でも、その理由は割とはっきりしていて、この映画がただ人を恐怖に陥れたいB級ホラーなどではなく、4人が「強者の白人」として君臨する「文明批判・資本主義批判」という軸を持っていたからだと思う。プロットがちゃんと真面目なんだよね。
「本当の食人族は誰なんだ」
モンロー教授のラストの呟き。
未開の地の原住民?
4人の探検隊?
テレビ番組の制作者たち?
それを見て喜ぶ人たち?
それともモンロー教授?
並べると全員が真犯人のように思えてくる。
そしてこれには、醜悪な作品を制作して動物殺しにも反省の色を見せない監督自身もノミネートされるし、スクリーンを超えて僕らにも降りかかってくる。
序盤のモンロー教授と後半の探検隊による木族への対応は、対比構造になっていた。
相手とコミュニケーションを取ろうとするモンロー教授と、民族として上位であることを誇示した探検隊。
その結果、モンロー教授には人肉が振る舞われてそれを食べるわけだけど、あれはおそらく「儀式の音声を吸い取る」という特殊な力を持つ者として、畏怖の念を抱かれたからだと感じた。
であれば、木族にとっての人肉は「献上品」もしくは「位の高い民のみが食べることができるご馳走」なのかもしれない。普段食じゃないんだよきっと。
カニバってしまったモンロー教授は、彼自身が言うところの「食人族」なのだろうか。僕としては違うと思う。
本作のおいての食人というのは文字通り「人を食べる」ことではなく「搾取する」という意味のメタファーだと感じたからだ。
本作では「動物殺し」が繰り返し描かれる。
あまりに残酷な描写で反射的にけしからん気持ちになるのだけど、同じことを先住民がやっていると想像すると、かなり印象が変わってくる。
彼らの殺生は「生きるため」だろう。
探検隊ももちろん短期間とはいえ、生きるために殺した。でもそもそもの目的が搾取から始まっている。先住民と同じであるわけがない。
モンロー教授についても、興味本位なところはあったかもしれないが、下等民族を利用してやろうという邪な気持ちは持っておらず、むしろ助けようとすることもたびたびあった。
人肉を食べたけど食人族ではない。
それが物語上のモンロー教授の存在意義だったんじゃないかな。
ちなみにその理屈でいえば、先住民も食人族ではないんだろう。
ただ、姦通の罪への拷問や妊婦を撲殺するのは、我々から見ればどうしたって蛮行に見えてしまうよね。
宗教や風習に口出しするのは難しいけれど、男性社会の中の性的搾取と言えるんじゃないかと思う。
アフリカ等での資源の搾取。
軍人による戦地でのレイプ。
B級ホラーかと思わせておいて、搾取を生み出し続ける資本主義や文明社会を批判する予想外でピューンピューンな作品だった。