ドント

パリピ芸人、ロシアへ行くのドントのレビュー・感想・評価

パリピ芸人、ロシアへ行く(2023年製作の映画)
-
 2023年。アメリカで人気の半裸中年スタンダップコメディアン「ザ・マシーン」の持ちネタ(たぶん)である、「俺は若い頃ロシアでブイブイ言わしててさ~」を原案にした長編映画。なにそれ。疑問はさておき、家族との不仲に苦しむ仲、ブイブイ言わした頃の列車強盗に端を発してマフィアからガラをさらわれ、半裸中年芸人とお父さん(マーク・ハミル)(仕事を選べ)は一路ロシアへ、というお話。
 ザ・マシーン氏は日本で言うと、ハリウッドザコシショウとくまだまさしを足して喋りを足したような芸人である。そやつのホラ話が元ネタというのだからタイトな映画であるはずがない。全体にゆるゆるである。こういうのは90分でやれよ、と言いたくなるのであるが、なんかこんな王道というか古風なお話って最近なかったね、たまにはこういうのもいいね、としみじみしてしまった。
 こういうの、というのは、「様々な問題を抱える人物が試練に直面して、それにぶつかったり乗り越えることで人として成長し様々な問題もなし崩し的に解決しちゃう」みたいなね。アメリカ映画というかアメリカのコメディ的なノリ、味わい。いろいろ問題点は見えるけど、なんかハッピーエンドになったからまぁいいか! めでたしめでたし! 的なアレです。
 主人公とお父さんは基本「ワッ、ワーッ」とビビって逃げて後ろからケツを蹴られ、「あっ思い出した!」と道行きを示すだけなので消極的にも程がある展開なわけですが、人を愉快にさせる半裸芸人の生き様が何やかやあって他人を救っていたり最悪の事態を回避していたりするあたりのホッコリ具合、情けは人のためならず感、その雑さも含めてあぁ、いいな、と思えたのであった。冬場の焚き火のようなあたたかさ。
 政治は絡まないとは言えいま危険な国となっているロシアに飛ぶという謎のチャレンジング精神も芸人的でよろしく、強めロシアン女マフィアともなんやかやで仲良くなってしまう流れ、相互に感化しあう展開なども難しい顔がほころぶゆるやかさで、ついでに言えば悪いのは組織の旧弊的な長という落とし所もなかなかにクールではなかろうか。人と人が交われば徐々に気持ちが通い合う、そういう前向きさがある。あと無駄にグロいのもピリリとしてよい。
 あとベタとは言え主人公が急にクライマックスで根性出して強くなるやつ、これもなんか久しぶりに思える。あまりの懐かしさに心が安らいだ。やたらと褒めているけれど全体にゆるゆるな映画であって、構成とか編集とかもたいそう乱暴である(回想に入る映像マジックが無駄に上手いのはご愛嬌)。せわしない世の中において、気負わずダラダラと観れる点が好ましかった。なのでこのひどい邦題も、まぁいいか、そんな目くじら立てなくても! となる。
ドント

ドント