理容師はずっと客の後頭部を見てるのだという当たり前のことに気づかされる。「本人よりも後頭部のことがわかっている」「後頭部を見ればどんな髪型が合うかすぐわかる」
そうか。彼らはずっと後頭部を見ていて、客の顔を見るのはほとんど鏡越しで、その視点は客が自分の顔見るときと同じだ。直接見るのは顔剃りのとき。しかも上下逆さから見ている。理容室の店主アールイが客の顔側から髪を切ったのは初めてのことだったかもしれない。しかも相手は仰臥し動かない。彼女が仕事を続けていくなら今後はこういう仕事も増えるのかもしれないなと思いながら観ていた。
手持ちカメラの多用はちょっとなあと思ったが、全体に丁寧で性善説で作られている感じがよかった。ゆったりした流れでシームレスに時間が前後する構成と、ブラウン管テレビなど小道具が効いていたと思う。アールイが翡翠をつけていて娘も緑色のアクセサリーをつけていた。猫がいいし、理容室で常連客が丼で何か食べながら待ってるのもいい。オバさんたちがはしゃいでお出かけしてるのもよかった。