岩嵜修平

12日の殺人の岩嵜修平のレビュー・感想・評価

12日の殺人(2022年製作の映画)
3.7
面白いのだが、実話を元にしている分、判断が難しい。冒頭に殺人シーンが描かれるが、実際にそれが行われたかの記録は無く、被害者が直前に自撮りした動画だけ。登場する男は警察(theホモソ)側も含めて偏った思想の持ち主だらけだが、フェミサイドとして扱うことにも、偏りを感じる。

フィクションとして、家父長制や男性中心主義に囚われた男たちを糾弾する話なら良いが、実際に起きた未解決事件をベースにしているとなると別。万が一、誤った方向に捜査が向かっていたとすると、それは、そもそもの視点に誤りがあったのかもしれない。犯人が明確な『聖地には蜘蛛が巣を張る』と違う。

とは言え、3年後の変化をしっかりと描いたことには意義があると思う。女性という違った視点が入るだけでも大きく変わる捜査。それが功を奏すほど現実は甘くないが、それでも、当時にその視点があれば展開も違っていただろう。観客に委ねるラストは『落下の解剖学』と共通する感じもあった。仏映画節。
岩嵜修平

岩嵜修平