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ミッシングのべーすべーすのレビュー・感想・評価

ミッシング(2024年製作の映画)
4.3
吉田恵輔監督最新作。
以前同監督の空白のレビューの際、薬のような作品だと感じておりましたが本作も妙薬口に苦し。とても苦し…。

劇的に辛く苦いのだけれど、ラストに近づくにつれ苦味の効能が効いてきて、薬のようにじんわりと心に響く考えさせられる展開に胸が熱くなりました…。
今現在の日本の報道姿勢やSNSの加虐性の問題を描いた本作は、個人的に漠然と感じていた現代の日本社会の病に効くのではないかと感じました。

本作の素晴らしいところは台詞の使い方だと感じました。
ある人物が放った「その事実がおもしろいんだ」というセリフが突き刺さった。皆んなおもしろいことは大好き。けれどもおもしろいキャッチーな話題ばかりを取り上げて、重大な報道はアンテナを張っていないと辿り着けないのは現代の病ではないかと常々思っていました。
報道も視聴率を求めた商売になってしまうと
大切なことがこぼれ落ちてしまう。
今の時代に本作の様な作品が公開されるのはとても価値がある事だと思った。

「事実を伝えるのが報道」というセリフが先ほどのセリフと対となって何度か出てくる。面白くない事実は日の目を見ず、面白い事実だけが目につくようになってしまった情報化社会は果たして良い方向に向かうのだろうか…。ラストの展開も新たな報道によって行動を起こしたことが、ある種の救いのようなモノに繋がっていくのがとても感慨深い。苦く辛い薬のように自分の心に効いた事は間違いない。
台詞の使い方もすごいなと思ったのが、ある歌詞の様な台詞回しが出てくるのだが、実はその前のシーンでも有名な歌詞の様な台詞が出てきてて…山〇〇〇よしの歌みたいだなと思ったいた所に、大事なシーンでシュールな言葉遊びを挟んでくるのが吉田恵輔監督のオリジナル脚本の妙だとと感じました。
観客の観点を理解して引き込んでくる技。

キャスト陣も素晴らしく、石原さとみさんのここまでやるか!!というのには衝撃的だったし、それを受ける青木崇高さんすごく良かった。森勇作さんもまず髪切ろ。と心の底から思わせてくれるなんとも居た堪れなさ、中村倫也さんの砂田役は代表作の一つになるんではないでしょうか。個人的に砂田の役に、とても共感してました。

上半期の方がは中々の傑作揃いになっておりますので、その中でもこのmissingは頭1つ飛び抜けた印象を受けた作品でした。






この作品を見ている時におばあちゃんがビニール袋を冒頭と、中盤、ラスト間近でガサゴソしてて久しぶりにキレそうになったのですが、本作を見ていてキレいいんだろうか…というモヤモヤの中我慢しました。
良い作品だったので、それが無かったらもっと集中してたなと思うと悔しい限りです。
劇場でビニール袋はやっぱりよくないです!!