九月

ネクスト・ゴール・ウィンズの九月のレビュー・感想・評価

4.7
サッカーが好きで普段から観ることがよくあり、自分の好きなサッカー×映画という組み合わせが見てみたかったものの、サッカーを描いた映画ってあんまり面白くならなさそうだとずっと思っていた。
タイカ・ワイティティが監督、マイケル・ファスベンダーが主演なのでそれなりに楽しめるだろうと思っていたが、めちゃくちゃ面白い上にちょっと泣けて、明るい気持ちになれた。

サッカーの監督ってかなり責任重大な仕事だけど、アンチも多い印象。特に対戦相手チームのファンよりもむしろそのチームのファンからうまくいかなかった時に批判されることが多くて、かなり大変な役割だと思う。しかも、好調な時よりも不調の方が目立ち、すぐに解任を持ち出される。
さらに叱咤激励と暴言は紙一重で、監督の熱さも指導される選手や観ている観客にとっては時として受け入れられないこともある。その辺の、普段Jリーグの試合を見て感じていた複雑な監督像が、トーマス・ロンゲンを演じるマイケル・ファスベンダーによって表現されていた。

かつては自身も選手として活躍して、数々のクラブチームの監督を務めてきた主人公が職を失い、弱小チームのアメリカンサモアに行く他なくなる。W杯の予選大会まで数週間という短い準備期間の中で、監督に託されたのは「1ゴール」という、到底大きいとは思えない目標。彼のプライドと、アメリカンサモアの人々の自由な感じが全然噛み合わなくて、傍から見ると笑えるもののかなりもどかしい。
そんな彼らが団結していったりそうでもなくなったり…を繰り返す。監督と選手やアメリカンサモアの人たちの、気質やサッカー観の違いをどちらが良いとか悪いとかではなく、生まれ持ったその人の本質として描いているところや、お互いに少しずつ融合していく様子が見ていて心地良かった。
監督だけがチームにゴールや勝利をもたらす救いの存在というわけではなく、逆にチームの選手たちや現地の人々が監督の凝り固まったところ解していくような関係性も好きだった。

私ももう一度、純粋にサッカーを楽しんでいた好きになったばかりの頃の目線を取り戻したくなった。今年もJリーグが開幕し、シーズンが始まったばかりのタイミングで観られてモチベーションまであがる。
タイカ・ワイティティは案の定かなりハイラインを保っていた。
九月

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