九月

アメリカン・フィクションの九月のレビュー・感想・評価

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)
4.6
軽やかなタッチとは裏腹な、強烈な皮肉が予想外に突き刺さってくる。
パッとしない中年期を送る売れない黒人の作家モンクが、出来心からステレオタイプの黒人の物語を書いてみたら、自分の意には反してヒットしてしまう。もはやなりすましのような所業はどんどんエスカレートし、さすがにこれは評価されないだろう、と取った振る舞いが世間にウケる羽目に。

周囲の反応との乖離に、時として恐怖を覚えるあの複雑な感覚には身に覚えもあり、映画でも小説でもそれ以外のことでも、同じものを見ていても人によって全く見え方が異なることを改めて思い知る。ひとしきり笑ったあとに顔が引き攣ってしまう展開、深刻なことをあくまで陽気に描いているところが好き。
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