華麗なる加齢臭

首の華麗なる加齢臭のレビュー・感想・評価

(2023年製作の映画)
4.0
【戦国時代のリアルとたけしの限界】
ちょうど、今「武士の起源を解きあかす ──混血する古代、創発される中世」という新書を読んでいる。これを読むと、もともと武士なんて「忠義」や「礼節」等々とは対極に、私利私欲で無法の限りを尽くす集団から発生したことがよくわかる。反社あるいは愚連隊だ。

マフィアにしてもヤクザでも、その縄張り、地方で頂点を極めたものは豪華絢爛な御殿や要塞に住み、その権力の象徴とするが、戦国武将も城という要塞で城下の者を威圧する。

つまりねぇ、国家として中央集権システムが確立するまでの戦国武将なんて、自らの欲望を正義とし、権力や色情に溺れた暴力を後ろ盾とした集団で、ならず者軍団なんだ。ヤクザやマフィアよりたちが悪い。

その意味では、北野武が描いた武将たちは、リアルだ。まちがっても大河ドラマには出てこないアウトレイジ達だ。よくぞ描いてくれた。また、戦の跡に散乱する死体からは腐臭が漂い、戦勝品としての生首も十分にグロテスクだ。これも今までの戦国時代劇とは一線を画す。

ただ、武が演じた豊臣秀吉、セリフ回しを含め浅草の芸人の様だ。織田信長の加瀬亮が尾張言葉でキレていたのと対照的。史実でも宣教師フロイスが秀吉について「肉欲と不品行においてきわめて放縦に振舞い」と評している。
狡猾老獪さは感じられたが、尾張言葉あるいは河内弁で、ギラギラしてほしかった。チンピラ感やシャブ感が足りないのだ。まあ彼に演技は出来ないからしょうがないか。