華麗なる加齢臭

孤狼の血 LEVEL2の華麗なる加齢臭のレビュー・感想・評価

孤狼の血 LEVEL2(2021年製作の映画)
3.9
【笠原 和夫は偉大なり】
最初に断っておくが、紛れもなくお気に入りの作品であり前作同様ロードショウ―公開中に数回は劇場に足を運ぶだろう。また、Filmarksでも高評価が多く「傑作」と称して間違いはない。

しかし、私にとっては、どうしても認められない点がある。それは「ホンがお粗末」なことだ。
前作もそうだったが美術にも細心の注意をはらい見事な時代再現性だったし、松坂桃李や鈴木亮平は言うに及ばず、出演者の誰もがクオリティーの高い芝居を見せてくれた。特に印象に残ったのは瀬島役の中村梅雀。見事に騙された。

それらと比較すれば明らかにホンがお粗末。県警上層部が上林を生かし肩入れをしていることの理由も消化不良だし、なにより手錠をはめられた日岡が警察署を抜け出すあたりから急に物語はB級アクション映画になってしまう。
手錠をかけた日岡のカーチェイス、運転していた車が横転し大破したにもかかわらずターミネーターの様に登場する上林、そしてその後の死闘。
100%白けてしまった。「ありえないじゃん!」。リアリズムの中の架空性が吹っ飛んでしまう。

舞台が広島と呉原市という呉市をイメージさせること、モノクロームの写真を用いナレーションを入れる手法、そして広島弁でのやり取り。孤狼の血シリーズが「仁義なき戦い」へのオマージュであることは疑いの余地はない。

「仁義なき戦い」は僅か1973年に3本、そして翌年に1本が作られている。(完結編以降は除く)この短期間に量産した作品のため美術などのチープ感は否めないし、死んだ俳優が役名を変え登場する。今じゃありえないだろう。
しかし、にもかかわらずヤクザ映画の金字塔と語りつがれているのは、脚本家「笠原 和夫」の寸分の隙も無い、命を削りながら書かれた台本があるからだ。(もちろん深作組の熱量も)
笠原のホンは「広島弁のシェークスピア」と評され、そのセリフ集のムック本やサイトが数多くある。そして彼が残した「仁義なき戦い調査・取材録集成」や「映画はヤクザ」なりを読めば「”命を削って書いた”」が決して誇張した表現ではないことがわかるはずだ。
そもそも、虎狼の血のコンセプトは笠原が書き、深作が撮った「県警対組織暴力」(1975年)だしw。
白石監督の様に深作監督と肩を並べる監督は現れるだろうが、取材を重ねホンを出すたびに臓器を摘出した笠原 和夫を超える脚本家は現れないだろう。悲しいけれど。

観たいのは東映ノアールでSFバイオレンスではないのだw