keeper7

首のkeeper7のレビュー・感想・評価

(2023年製作の映画)
3.3
バイオレンスを題材にした北野監督作品は好きなのでそれなりに楽しみにしていた本作。

今作は今までの作品にあった北野スタイルはかなり薄れていた様に思う。時代劇という事もあってか日本以外もかなり意識しエンタメ色が濃くなっており、北野作品の特徴でもあった静の表現は後退し、動の表現でひしめいているため今までのスタイルを期待していると違和感を受けると思う。でも自分的には全然OKだった。

何が良かったか。時代劇特有の様式美など無視し、今まではあまり描かれなかった汚い部分かっこ悪い部分残酷過ぎる部分 をちゃんと描いているところだ。他の時代劇でも意外とありそうでなかった部分が扱われていて素晴らしかった。
男色(BLという書き方は合わないので)、容赦ない殺戮、戦での無様な戦い方、それらがとてもリアリティを醸し出し、そうそう!戦国時代の人間ってこうだよなぁって思わせてくれる。見たことはないがwでも所々やや過剰なエンタメ要素をぶっ込んでくるため、忍同士の戦い方などちょっとやりすぎてバランスの悪さを感じたが、外人受けはするだろう。

キャラの造形も良かった。とにかく1番感心したのは加瀬亮氏演じる織田信長につきる。そうそう!信長ってこうだよね!笑 とマジで思った。今まで様々な人によって演じられてきた人物だが加瀬亮の信長はもう、これ信長本人でしょって思えたくらい腑に落ちた。そして尾張弁の親近感w
数人だけ配役のイメージがちょっと合ってない部分もあったが凄く気になるほどではない。
個人的なことだが中村獅童氏が昔からあまり得意ではないのだが(得にお顔)今作品の演技とキャラで今までのイメージが大分払拭された。本当に良いキャラクターだったし、演技も申し分なかった。

VFXや特殊メイクも邦画としてはかなり頑張っていた。江川氏率いるメイクアップディメンションズはクオリティが上がったと思う。カツラの出来もほぼ問題なかった。(自分はカツラの境目ラインが見えてるだけでストーリーが入って来なくなるほどの重要なポイントなので)

諸説ある本能寺の変があっさり目で描かれていたのにびっくりしたと同時に、え!?こいつが?!!も良かったしそこで終わらなかったのも北野監督のセンスだなぁと感じた。
とりあえず自分が見たかったタイプの時代劇で満足でした。
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