zhenli13

首のzhenli13のレビュー・感想・評価

(2023年製作の映画)
3.7
山崎の戦いあたりで風雲たけし城そのものの構図になってた。傍に控える大森南朋の秀忠と浅野忠信の黒田官兵衛は、そのまんま東と谷隼人の立ち位置か。というかこの三人が揃うシーンは、たけし、そのまんま東、ガダルカナル・タカの座組ということなのだろうか。

巷で言われるように編集のキレは無く、撮影も恥ずかしいピン送りとかあって印象に残るショットはあまり。荒川良々の自決シーンくらいか。あと加瀬亮の織田信長が能を観ているシーンも好かった。
予告で加瀬亮による狂い芸はなんとなく想像ついて、色気はあるがゾッとするような魅力まではもう一歩という感じ。西島は西島の役という感じで、遠藤憲一はひたすら正面ショットに眼光を与えられるところが笑った。個人的には大森南朋の小物感と、大竹まことが好かった。ホーキング青山のキャスティングも、まもなく終焉を迎える中世を感じさせる。木村祐一の演出にだいぶ質量を注いでて政治的な何かを感じなくもないものの、「殿」へのネタ見せ的な立ち位置であり速攻殺されそうに見えながらも、最後まで重要な役回りとなっている。北野武演ずる羽柴秀吉の「どうせお前ら、死ぬけどな」の台詞は、すべての登場人物に降りかかる。

ホモソーシャルな争いは戦前の日本軍などよりも寧ろ高度経済成長下のサラリーマン派閥抗争的な印象があり、お笑い芸人ヒエラルキーでの上位下達を表すものでもあり、そしてやっぱり風雲たけし城ほかビートたけしが関わったかつてのテレビ番組のメタ的扱いとなる。其処此処に緩慢な笑いを誘うシチュエーションが差し挟まれるのも、それらを彷彿とさせる。自分が小学生のころにちょうど『8時だヨ!全員集合』から『オレたちひょうきん族』への移行期があり、最初はひょうきん族の何がどう面白いのかよくわからなかった。リズムやテンポが薄い笑い、楽屋オチ的な笑い、それらと本作の弛緩した構成は、共通するものがあるのかもしれない。

女性そのものをほとんど介在させず(柴田理恵くらい。彼女も旧来のお笑い芸人における名誉男性的な汚れとして演出される)、時代や扱う人物像としても体よく衆道を配置できることにより、ミソジニーを不可視化しているところもある。感情移入するとしたら西島とエンケン、加瀬亮それぞれの愛憎なのかもしれないが、耽美的な描き方はされない。特に西島とエンケンの絡みにはどこかぎこちなさもあり、それらの愛憎は本能寺の変あたりから政争の具として雲散霧消していく。
ラストのたけしの台詞、壮大かつ緩慢な物語のオチとしてはとても好いと思う。

斬首の連続だけど「どうせCG」と思ってしまう。やはり『湖のランスロ』はすごかったのだと改めて。
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