たか

キリエのうたのたかのネタバレレビュー・内容・結末

キリエのうた(2023年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

キャストに惹かれて鑑賞。

予告を見た感じでは、
婚約した彼女がどこかに行ってしまい〜…
的な話かと思いきや、
重さが全然違った。

鑑賞後に気がついたが、
シアター入り口のポスター下に、
地震の話/シーンがあると注意書きがあった。

ストーリー自体はキリエの歌で紡がれるように進んでいく。
新しい歌が出てくるたびに、
アイナ・ジ・エンドの歌唱力に圧倒される。

キリエが何者で、どのような生い立ちかがわかるにつれて、歌の重み、説得力が増されていくのがわかり、歌はその人の思いがあればあるほど輝くものだと感じた。

1番見ていて苦しくなったのは松村北斗演じる夏彦だ。
若い頃の過ちや、責任への恐怖、失くしたものへの後悔、残されたものへの懺悔…
大人になったキリエと会い、歌を聴いた後の感情が溢れるシーンは思わず涙が出てしまった。

夏彦と一緒に幼いキリエを支えてくれた、
黒木華演じる教師の寺石風美。
さすが黒木華、抜群に演技が上手い。
幼いキリエが怖がらないよう、
ただ彼女が会いたい人に会えるように支える姿からは、彼女が教師をしている意義を感じさせてくれた。

この2人のシーンで1番記憶に残るのは、
行政とやりとりする場面。
ここには岩井俊二監督の底知れぬ社会への怒りを感じた。

確かに年の離れた血縁関係もない人同士が一緒にいれば、誘拐の可能性がないわけではない。
ただその背景を1ミリも知ろうとせずに、
規則だからと引き離すのは本当に正しいのだろうか。
引き離される側の意思はそこになくてよいのか。
見ていてこちらも怒りを覚えるシーンで、
胸がモヤモヤとした。
※映画内に2回ほど行政機関との衝突があるが、
 どちらも胸がモヤモヤしました。

そして最後にメインキャスト4人目、
広瀬すず演じる逸子。
まず初めに、やはり可愛いな。笑
顔面の良さにびっくりする。

役もその良さを活かした、
結婚詐欺師兼キリエのマネージャーという、
すごい組み合わせ。
飄々と生きていく様はキリエに生きていく勇気を与えてくれていたと思う。
最後は劇的過ぎた感はあったが、悲しかった。

映画後半で開催される、
野外フェスは昔の学生運動を彷彿とさせるシーンだった。
今の日本ではまず発生しないと思うが、
そういった運動ができるほど、
自分の将来に期待したい人がいなくなった結果なのかも知れないと思うと悲しくなる。

久しぶりにここまで長い作品を鑑賞しましたが、
途中中弛みもせず、最後席を立つのを躊躇うくらい、作品に引き込まれました。

紹介していないキャストも素晴らしく、
良い作品に出会えました。
ありがとう。

※以下地震関連のシーンについて
キリエのように家族を探し、友人を探し、
恋人を探し、命を落とした人は数え切れないのだと思う。
ただその行動のお陰で助かった人もいる。
どちらが正しかったのかは、当事者にしかわからない事だ。

誰かが残された人が可哀想だと決めるのはお門違いで、助けてあげるというのも烏滸がましい。
助けを求められたら手を差し伸べるだけでいいと思う。

今現在もトラウマがある人は、この映画は見ない方がいいと思う。
個人的に地震のシーンがここまで長めに映されている映画は他にない。

ただそのシーンを作る意味はあるし、
特に地震を経験していない人には、
見せるべき辛さだと思う。
たか

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