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PERFECT DAYSのandhyphenのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
3.8
カンヌ国際映画祭男優賞受賞作。
ひとことでいえば「トイレ清掃員の日常」。だが、毎日規則正しいルーチンを丁寧にこなす男、役所広司演ずる平山は、どこかしら人間を超越しちゃってるな、と観終わったあとしみじみ感じる。
役所広司は表情の変化がものすごく巧み(台詞があまりないのもある)なのだが、それでもこの平山は全然わからない。恐らくさまざまなものを経てあの日常に「到達」したのだと思うが、その世界に至るまでは描かれない。なんというか、なにか悟りを開いたひとが俗世との接点としてトイレを丁寧に清掃しているというか。またそのトイレが全部洒落ているのである。
街の風景も、やり取りも、現実のようでそこから離れていくような。その意味で圧倒的現実感をもってそこにある柄本時生が素晴らしい。あの役をあのテイストでできるのは多分彼しかいないだろう。
映画は映画であり、その映像に語らせることが第一義だと考えたときに、この物語を映画足らしめているこの映像の巧みさは素晴らしいと思う。
ただ難しいなと思うのは、良い映画なのに、東京に暮らす自分はどこか、異世界映画みたいにこの物語を捉えてしまうところ。いや私も東京を知りつくしてはいないけど、東京って…こんなところだっけ?東京という街はもっと汚くて、無情で、優しくないよな、と思ってしまったり。
そして役所広司の表情の変遷に観ている私がついていけていないのをはっきり感じた。私はこの物語から隔絶されている、という感覚。映画としては素晴らしい出来だし物語も素敵なのに、観終わったあとなぜか感じる疎外感。捻くれているといえばそれまでだが。
影踏みをする役所広司と三浦友和は人間味があってよかった。あと個人的に犬山イヌコがよかった。
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