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キラーズ・オブ・ザ・フラワームーンのandhyphenのレビュー・感想・評価

3.9
マーティン・スコセッシの新作は「アイリッシュマン」ばりの長さだし絶対に映画館で観なくては…と思いつつもその時間を確保できずようやくの鑑賞。
原作は観る前に読みたかったが完全に積読である。「花殺し月の殺人 インディアン連続怪死事件とFBIの誕生」が原作で、ディカプリオはジェシー・プレモンスが演じていた捜査官の役を想定されていたらしいが、本人の希望であの役になったそうである。ディカプリオが捜査官役だったら全然違う展開の映画になっただろうな…。
「インディアンの命は犬の命より軽い」ということばが劇中に出てくるが、ロバート・デ・ニーロ演じる「キング」はじめ、彼らはオセージ族が持つ権益にしか興味がない。殺人は極めて杜撰に行われるが、捜査がまともにされないのだから無理もない。
レオナルド・ディカプリオの流されやすい優柔不断な男っぷりがやけにはまっていた。状況に流されすぎだろ!!あれで目の前にロバート・デ・ニーロ来たらね…。デ・ニーロはなんというか、悪を為している意識なく悪というか、そこが怖かった。
ディカプリオが捜査官の役だったら後半の駆け足捜査がメインになったはずなので、そこは若干寂しい(でもジェシー・プレモンスはこういう役めちゃくちゃ似合う)。その分リリー・グラッドストーンの表情が圧巻というか、彼女はわかっているけどわかりたくないことをあんなにも抱えて、なおあの静けさで夫と対峙するその力強さを感じた。
長さ自体には問題を感じなかったが、インターミッション入れて後半を捜査裁判劇にしても良かったのかもねとは思う(どうしても最後のほうが駆け足すぎて…)。それやると4時間は超えたと思うが。
遠い歴史の話のような気もするが、現代にも確実に存在する無意識の悪のようなもの、にやはり恐怖する。そういうものに対して、正面から、しかし淡々と向き合うスコセッシに畏敬を覚える。そして最後にスコセッシ自身が出てきたこと。彼が映画で伝えようとすること。受け止めないとな、と思った。
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