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ボーはおそれているのandhyphenのレビュー・感想・評価

ボーはおそれている(2023年製作の映画)
3.9
アリ・アスターの3作目。「ミッドサマー」観たときも「このひと実はめっちゃ繊細で良い人なんだろうなー」と思ったが、「ボーはおそれている」でもおんなじことを考えた。
母親の感情に子の抑圧。家族というなかで発生するある種特別な負の感情を思いきりよく増幅させてるのがこの物語。どれだけ愛しても同じだけは返してくれない子への憎しみと、それを感じとって何も選べなくなった子。
冒頭のあり得ぬくらい荒廃した街(パンフレットを読んでああそういう解釈もできるのね)、第2パートの奇妙なまでに整った居心地の悪さ(いやドゥニ・メノーシェさん以上にあの一家怖)。第3パートでアニメーションに入り込むホアキン・フェニックスだけがやけに男前なのは、あれがボーが進み得たであろう道だからなのか。
情はつねにひとを脅かすが、ひとは結局情でしか動けない。「ミッドサマー」の終わりはどことなく笑顔になれたが「ボーはおそれている」は一貫してボーがそのままなので、なにも変わらず、鬱屈と静謐で物語が終わる。
アリ・アスターの中で家族の情がどんなものなのか、それは知る余地もないが、映画にして、画としてそれを解放するのはある意味健全なのかもな、と思った。
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