てっちゃん

PERFECT DAYSのてっちゃんのレビュー・感想・評価

PERFECT DAYS(2023年製作の映画)
3.7
話題でしょ?
役所広司さんがカンヌで賞とったんでしょ?
公共トイレ清掃員の話?
観に行くしかないでしょ?
ということで劇場へ向かいました。

あらあら、劇場会員証の期限が1ヶ月過ぎていましたが、プラマイ1ヶ月なら更新可能なんだとか。
もうそろそろ電子会員証になるみたいですが、まだ紙で大丈夫とのこと。
紙の方が私は好きなので、なんだか寂しい気持ちになりながらこの会員証を大事にしていきたいなと思った次第でした。

さて本作の主人公、平山は間違いなく紙の会員証を愛す、というか紙しか愛せない人物だと思います。
電子会員証になったら、何も言わずにそっとそことお別れする、そんな人物だと思います。

それくらいに、本作の平山という人物は生きています。
物語内で生きていますし、なんなら現実でもその姿を探してしまうかもって感じです。

私は本作に対し、いいなと感じつつも、うーんと思うところも同じくらいありました。

【いいなと思ったところ】
1日も同じ日はないですね。
平山の生活は仕事がある日、休日で分けられます。
そりゃそうだろって感じですが、彼の日常はルーチンワークと化しています。
仕事のある日は、目覚めてから寝るまで決まった行動をします。

印象に残ったところをいくつか。

仕事終わりの銭湯いいですね。
銭湯好きの自分にとっては堪らないシーンでした。
仕事終わって疲れた身体を労る銭湯。
顔馴染みの常連さんとする会釈、、いいですね。

いつもので。
いつも行く飲み屋でいつもの店員さんから"いつものでいい?"っていいですよね。
顔を覚えていてもらえるのが嬉しいというか、、そりゃ嬉しいですよね。
私ごとですが、私も仕事のお昼ご飯のときに行くお決まりのお店があるのです。
1年半ヶ月くらい2週間に一度の頻度くらいで通って、毎回同じメニューを頼んでいたら、ついに"いつものでいい?"と言われました。
やっぱり嬉しいですね。

陰と陽。
本作はこれが印象的でしたね。
平山の好きな風景、平山の家族との関係性、三浦友和さんとの影踏み(おに?)、起床してからの太陽の変化、、どれもがこれに当てはまるような気がしました。
平山の目からは、世界はどのように映っていたのでしょうか。
彼は陰を愛したのか、もしくは陽を愛したのか。
私は本作をみて、彼はそのどちらでもなく、隠と陽の間にあるものを愛しているように感じました。
彼の生き方だったり、所作をみても、その方がしっくりときたんです。

人物がいきてますね。
良い映画の条件だと思いますが、本作ではこれがすごいのなんの。
平山という人間がいきています。
私の側にいるように感じるし、ふと彼を探してしまうし、彼のことを思い出してしまいます。
いきているにもさまざまですが、実世界にも存在している、そんな感じでしょうか。

【んーっと感じたところ】
これだけ書いといてですが、ひっかかり箇所もありました。

宣伝作品ではあるからね。
本作はTTTというプロジェクトの宣伝動画として作られていたものから、映画になっていったという経緯があります。
ということは、、ということなのかな?っていう見方を少なくともしてしまったのです。

なにせ”汚い物”が存在しないんです。
台詞では”汚い物”が出てきますが、作品の中には出てきません。
本作において”汚い物”を描写する必要性があるのか?と考えたら、私は必要があると思います。
そこをしっかりと描写させないと、一気に現実世界から本作が遠のいてしまうからです。
もしかしたら、TTTというプロジェクトは頻繁に清掃を行っているようなので、”汚い物”が存在しないのかもしれません。
トイレの中にはゴミもありますが、整然と落ちていたりします。
よきもの、きれいなものとしてトイレを見せているんです。
そこに違和感を感じてしまいました。

少し善き人をつくりすぎているのでは。
これも私感ですが、平山という人物以外の他の人物に対してもですが、善き人として執拗に描かれているように感じました。
幼児を登場させ、言い方は悪いがそれで良き人だと思わせたり、心底うんざりしたのは障がい者でもそこを感じさせたところです。
そんなことしないでも、平山という人物に対しての印象は悪く持っていないのにな、、と感じました。
そこまでして善き人を描きたい理由が分かりませんでした。
本作の主張はそこじゃないだろと思ってしまいました。

ニッポンの素晴らしさよ!
こここそ完全に私感です。
最近顕著である”世界に誇るニッポン”、”世界から注目されるニッポン”、”強いニッポン”が滲み出る感。
少しだけ居心地が悪くなってしまいました、、
しかし、それと同時に頻繁に出てくるタワー(名称分からないです)との対比は、貧富の差を現しているとも感じましたが、本作の機能的には陰と陽の部分の方が大きいのかなと思ったりもしました。

長々と書いていますが、最後にこれだけは書かねば!です。
役所広司さんの最後の長回しシーンだけで全てもってかれましたね、、
あの表情の変化、、素晴らしすぎたな。
てっちゃん

てっちゃん