109mania

哀れなるものたちの109maniaのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.5
 ダニエル◦キイスのアルジャーノンに花束を思い起こさせる。パンチの効いた描写に衝撃を受け、そして一気に引き込まれた。
 話としてはシンプルで分かりやすい。幼くて無邪気なベラは、人との関わりの中で次第に知的で哲学的で倫理的な思考を身につけていく。旅と共に成長し、成長に伴って、他者との関係性、上下関係が逆転していくその様は痛快だった。自分には心地よい敗北感も感じさせた。この感覚はゴドウィンの感情に近似していると思うのだが、それと同時に多くの父親が感じるであろう我が子の成長を見る思いにも似ていると思った。

 ダリの絵画のようにどことなく不快感を纏う映像や不協和音を多用する音楽、過激だがコミカルなニュアンスも含む性描写など丁寧に作り込まれた世界観にはただただ感服いたしました。
 そして女優エマ・ストーンへの賛辞はどう表現しても足らない気がする。ただただ素晴らしかったです。
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