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一月の声に歓びを刻めの109maniaのレビュー・感想・評価

一月の声に歓びを刻め(2024年製作の映画)
3.5
 前田敦子は映画界に欠かせないポジションを築いている。この映画でもいい演技をしているなと強く感じた。

 この作品は三部構成(四部とも言えなくもないが)になっている。組み写真のような、短編のオムニバス的な作品だ。一つの作品として世に出しているからには、各パートを組み合わせている意味があるわけだが、実はそれが伝わってこなかった。

 洞爺湖の中島と大阪の堂島の二つのパートには深い繋がりがあってわかりやすい。性犯罪によってその後の人生に強い影響を受けることとなった被害者本人、又は被害者の父親がそれぞれのパートの主人公。両パートとも主人公によるモノローグシーンが印象的だ。若干常軌を逸したかのような、一人芝居のような演出で、観るものの心を強く惹きつける。本作品を特徴づける場面だ。
 ネタバレになるが、洞爺湖中島編では、性転換した父親をお父さんと呼び続ける娘が、孫(娘の子)からは意地悪な呼び方と非難される。でも映画を最後まで観ると、(堂島編の後のエピローグ的な場面まで観ると)意地悪と言うよりも優しさやリスペクトの気持ちなんだと思えてくる。

 対して八丈島パートは短編の一作品としてみれば、親子愛や家族愛といったシンプルで分かりやすい作品のように感じた。ただ、先述の二つのパートに挟まれて配置されたこの意図が、なんともよくわからなかった。

 他の方の感想を見たり、映画雑誌など見て答え合わせしてみようと思う。
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