ぴよまろ

落下の解剖学のぴよまろのレビュー・感想・評価

落下の解剖学(2023年製作の映画)
3.2
夫が転落死した事件により、妻である主人公に容疑が向けられ、唯一の証人である視覚障害を持つ息子とともに、裁判の中で事件の真相を追う、法廷・スリラー作品。

法廷モノではありますが、中身は家族・夫婦のすれ違いと歩み寄りの物語。家族や夫婦という、当事者でないと分からない複雑な背景を、法廷で証言してもそれは物事の一面に過ぎない。まして物的証拠もなく、主人公サンドラにとっては母国ですらないフランスで、慣れないフランス語で説明しなくてはいけないという、何重にも複雑な感情のストーリーでした。良くも悪くもフランス映画らしいです。

物的証拠が無いため、弁護士も検察も、全ては想像と推測で物語を作っていき、主人公は違うそうじゃないと思いつつ、明確な反論ができないというシーンが長く続きます。しかし、息子(と犬)だけが想像ではなく、実証していく、というストーリーが印象的でした。一目見ただけで「イヤなヤツ」と分かる検察や、子どもなりに必死に考える息子、そしてどう撮ったんだと思うくらい賢い犬と、それぞれ演技がリアルで素晴らしいです。

2時間半という上映時間の上、画的な変化の少ない法廷劇なので、とにかく長く感じました。物事の一場面には、多くの背景があることを訴えた作品でした。
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