んたん

落下の解剖学のんたんのネタバレレビュー・内容・結末

落下の解剖学(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

この話を夫妻で書き上げたところがすごい、よほど精神を鍛えたい人がやる業では…。
劇中夫妻の口論が日常にあり得まくっているピリつき方で苦かった。声を荒げたり物にあたる沸点なども周囲の言い争い見ているようで。

フランスには、子供を子供扱いしないというぼんやりした印象を抱いていたけれど、その輪郭が見えてくる描写が顕著だった。データではなくあくまで印象が強まる要素を感じとっただけではある。

実際にダニエルはあの幼さにして、証言台では検事に、家では母親にもかなり詰められていて少々驚いた。突然父親を亡くしさらには被疑者に母親の名が挙がった状況下のたった11歳の少年であることを忘れそうになる。
混乱の最中だろうが悲しみに暮れようが、事件と見なされたその瞬間から、遺族ではなく参考人として彼と関わる大人たちの線引きの明白さには最後まで慣れなかった。

子供扱いをされないとは、未熟でも可能な限りの対等さと責任を許されることだと思っていたけれど、その意だけ示すには難く、時に子供本人らが主体である段階的成長を妨げるようにも感じる。
子供にもはなから厳しい社会は、信用の勘定に年齢を用いていないとも解釈できる一方で、ダニエルが自ら検証して分別を学んでいく過程をすっ飛ばしかねない、迎合を余儀なくする構造にも見えた。
致しかたない理由で空気を読んで斟酌することを覚えた彼が、このまま無邪気さを知らないまま成人するかもしれない可能性には危うさを感じる。
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