んたん

哀れなるものたちのんたんのネタバレレビュー・内容・結末

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
-

このレビューはネタバレを含みます

純粋な瞳で世界を発見する中で、本能的に生きていたベラが知性を身につけ、成長する瞬間を、流れるようにのびのびと捉えた映画。

性の発見から始まり、性欲を見つめたことをきっかけに、自分の欲望の正体、誰しもにあるべき尊厳に気づくところまで辿り着く。

いくらゴッドに愛されたとしても、籠の中にいたら無知だったはずの外の世界。彼女はそこで刺激もショックも受けるけれど、かわいい子には旅をさせよを体現してくれる。

そしてゴッドのストーリーを追えば、フランケンシュタインがフランケンシュタインを生んだ複雑な状況だけれど、彼はベラを決して拒絶しなかったことで同作のような悲劇は生まれなかった。
ラストシーンは怖くて震えるけれど、フランケンシュタインをベースにした本作での道徳に則ったら穏健な結末だったのか…きっと……

人は社会的に備わった理性で欲望をコントロールする。次第に理性のために顕在的な自尊心までも削ってしまいがちだが、ベラの生き様はそこで正直さを損なわずに済んだ姿。かつては支配されていた肉体でも、生まれ変わりの彼女は搾取や不平等の構造に静かに屈さず、ノーと言える。五段階欲求の上層部も諦めない。
だから彼女は、自らが人造人間の身で医者を目指すことも、マックスとのプラクティカルなリレーションシップとパッショネイトラブの両立も可能にする。

最終的にウィット映画ではなく、ちゃんと俗っぽくてコメディーでウケた。大人が喃語でキャッキャしながら死体をぐちゃぐちゃにするなんてお口あんぐりな怖さだし、海に身を投げ出されようとしても誰も動じないのも変だし、ベラに優しさを向ける人ほどエゴイストだったり、ダンカンがあまりにダサくて嫌すぎるし、笑ってしまう違和感は沢山ある。皆んな哀れ。

起こることの因果を時代のせいにさせすぎないようなやや大袈裟なビジュアルも良かった。スチームパンクな街や、より自由大胆なヴィクトリア調衣装もかわいらしくて目に楽しい。
そしてそれらを似合わせるエマストーンの才能には惚れた。これが細胞単位で演技するということなのだろうか。

とにかく、面白かった!
んたん

んたん