これは観てよかった
セリフも何もない短いシーンとかたくさんあるけど、どのカットもひとつも無駄じゃなかったなと映画観てて思ったの久しぶりだな
挿入歌（女性2人が歌うやつ）も大変に良い
名も生い立ちも何も知らないもの同士が惹かれ合う話
だけど手元の小さなスクリーン越しに加工され尽くした画像を見て相手を決めてメッセージでやり取り→対面したと思ったらホンモノの顔を見るのもそこそこに性器を擦り付け合って恋だの愛だのと勘違いして騒いでいる、みたいなソレとは真逆の話
もういい加減ひとりで生きていくのに慣れ切っていろいろ諦めがついてからの人生後半戦の、貧しくてしあわせとも言えなくていろいろ不器用な、なんというか恋愛映画としてお話を作るのにメジャーな層とは違うというか、”人生順風満帆なメインストリームから外れた”ひとたちの話
名も知らない、出会ってからトータル数時間の男を自宅にまねいて料理振る舞ったりするあの辺はわからない
でもそのわたしたちにはよくわからないし一般的な流れと全然違うんだけど2人が良いならそれで良い、2人らしくてそれが良い、みたいなとこがなんともじんわり良かった
ただしホラッパ、なんもしてないのにちょっと会っただけで『結婚しかけた』とか言ってみたり、『夢で婚姻届を出した』とか思考が行きすぎててなんか中年キモ童貞感すごかったし観てるこっちは基本ドン引きだったけども
そんな歪んだ夢の話しちゃうホラッパを笑って流せるアンサで良かったねーってなる
『この相手を逃したら後は無い！』みたいな必死さがあるわけでもなく、お互いあまり話もしないのだけど惹かれてて相手もそうだと確信してるあの感じ、なんだったっけ古い映画にあったな、なんだろうな、題名出てこないけどな、みたいな？
しみじみした
誰もスマホらしいものも使ってないしtextもしてないしvapeも吸ってなくてみんなタバコは紙タバコ、皆のアナログすぎる行動も、出てくる建物の外/内装も、出演者の服装や画面の作り方もなんだか全部70-80年代作品みたいな風情（携帯電話があるあたりが〜00年代初頭かな）、
なのに時折耳から入ってくるウクライナ情勢とか視界の端に入ってくるトラムのICカードリーダーとか飲み屋のQRコードかざしてね系ディスプレイとか、その辺で急にいやこれ2022年の話だぜってリマインダー入ってきて正気にかえる感じの懐かし&新しさが独特で混乱したけど全く不快じゃない方のカオスだった
途中まさかの眼鏡アダムドライバーでどうしようかと思ったし、ホラッパのチョイスがジムジャームッシュのアレだなんて無理すぎると思った（わたしはdead don’t die観てても苦笑いしかできなかった派）けどアンサは満足気で（気を遣ってるのか素なのかは知らない）個人的には共感も理解も出来なかった、でもそこも含めておかしいポイントなのだろうし、ふつうと違うあのふたりの話としてしっくりきてたのですごく成功してたと思う
なんでdead don’t dieなの？ってとこだけじゃなく、あそこ観終わったあとのおじさんたちが田舎司祭の日誌と似てるとか言ってていやいやいや？てなるとこも含めて笑うとこだと思うんだよね
金曜夜の娯楽がカラオケバーだったり、調子ハズレの歌とめちゃくちゃ自信あるらしい本人とか、そのあとがセレナーデでドイツ語で正気で大熱唱してるアレとかもうわたしには全部笑うとこすぎて大変だった
そもそも冒頭のスーパーの保安員ショットだけでもおかしいし、アンサが友達と無言で同じタイミングでジュース飲むとことか、あのカフェがブエノスアイレスって名前なのにドリンクにさしてあるマドラーが寿司だったりテーブルに折り紙置いてあったりするし、いやその前のバーカリフォルニアだって大昔に若者だったひとたちがやたらビールガバ飲みしててグラスあんなに放置してあるし、あのオーナーもバレバレに悪い商売してるし
病院のマガジンラックの2番目がチワワの可愛い雑誌だったり、意識のないホラッパに嘘のワールドカップの話するとことか（フランスとアルゼンチンに怒られるよ！）
ああいうのひとつひとつがなんかエリアスレイマンの『天国に違いない』に近いニヤニヤポイントだったのでずっと笑えてた
周りのお客さんたちはワンコに電話出させるとこと病院の受付しか笑ってなかったけども
ホラッパはダメすぎてアレなんだけど、最初の職場の移民労働者？の2人に手を挙げて挨拶するとこは好き、たとえ返事が返ってこなくても
昏睡中に断酒出来ててラッキーすぎる
アンサはやっぱりわりと理解は出来ないんだけど、あの皿捨てるのだけはめちゃわかった
ホワイトアスパラのサラダに春を感じた
カラオケバーのバーテンダー（髭+長髪を結っててバイキングみたい）がとても素敵で気になった
