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蟻の王のzogliのレビュー・感想・評価

蟻の王(2022年製作の映画)
2.5
屋内も屋外も光源とか考えて画面が作ってあってイタリア作品らしかったな
最後の天気雨も神がかってた
天気まで味方にしたのか

イタリア映画なのにきったない罵りの言葉ほとんど無かったの珍しかったし、cazzoがちゃんと悪態じゃない方の意味で使われてたので笑ってしまった

共産主義思想や性的嗜好は神父の祷や医療で『治癒』するものではないと分かりきっているわたしたちには新しく何かを学ぶための作品ではないけれど
治療とやらを施されて(電気けいれん療法一体どのくらいやるもんなんだあれ)痛々しい姿になったエットーレがいたいけにもアルドへの変わらない憧れを口にする法廷のシーンと、車を見送ってからもずっとそちらを見ていたあのラストはとても印象深くて 観て良かったと思わせてくれる
けど140分は長いし、140分もあるのに当事者2人の絆の深さや擁護してくれる他者との関わりも詳しくわからないままなのが心底残念

罰せられた時代の同性愛者の物語は各国さまざまな映画があるしもっと露骨な作品やもっと悲惨な作品もあるけれども、これは当事者2人の”接触”シーンがほぼ全く無かった事にも少し驚いた
アルドがエットーレの後ろから肩に触れたりするあたりがどうも教授の生徒に対する接し方とは違うんじゃないか、ってお芝居のせいでわかりやすくしてあるくらいで、口付けすらしてないし(あのイタリア人たちの話なのに!)抱き合ってる背中が一瞬映るだけ
2人が心を通わせるシーンの多くは詩のやり取りとその批評かいう源氏物語大河も驚愕の遠回し加減で、法廷の他者の発言や古い友人のあけすけな質問以外には直接的な表現も無かった
2人の事は2人だけがわかっていればそれで良くて、部外者が首を突っ込むものではないと徹底してたのかな
なのに突然の第三者によるボロン(日本だとボカされている)、このバランス感覚はなんなのだイタリア
(そしてあのボロンの彼、なぜジェノアのユニフォームを着てチャリンコ乗って歌うたってんだ
塔や教授の家がエリミアロマーニャ州のどこにあるのかいまいちつかめてなかったけど、ジェノアはその州のチームじゃ無いし最後カラビニエリに乗せられて帰省した時にラジオで流れてたのユヴェントスのゲームの話だし
まぁ隣の州だからあんなもんなのか?)

でもまぁ今の時代だと2周まわって『やっぱグルーミングじゃないのかよ』ってなっちゃうけどもね

あの共産党新聞の記者スクリバーニが食えないキャラで大好きだったけど、彼と彼らの周囲の人たちの役目と出番が割と中途半端で混乱した
なぜ公判の終わったあたりで『味方は増えてる』になったのか、画面のこちらの我々にはいまいち伝わってこないのが残念
ロシア語のやり取りとか編集長?とのやり取りとか削っていいからもっと掘り下げて欲しかった気がする
スクリバーニ、あのフリがあったからこれは控訴審で帽子脱ぐのかなと期待してたのに、控訴審すら話に出てくるだけで終わったし
教授とスクリバーニは敬語使ってなかったから思ったよりお互い打ち解けてたと思うのよね、だからスクリバーニのあの後も個人的には気になるのだけど

ぽつぽつ出てくる女性たちも今ひとつ何者なのか読めなかったから解説が必要
スクリバーニのおうちにいたあのシャワー女は誰なの、タオル一枚で出てくるってことは来客?のあの南イタリア男と寝てたって事なんだと思うんだけど
あの演説お姉さんとは違うんだよね?なんかわたし見逃してた?

昨日見たフランス映画の料理に対する長口上も字幕を追うことを途中でやめたけど
今日見たこれも教授のダンスに対する文句とかエットーレのお兄ちゃんに対する批評とかは字幕を薄目で流して終わった

詩は端的な表現しか出てこないから平気だった

dispiace とgiusto のいろんな使い方出てきて勉強になった
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