むぎたそ

関心領域のむぎたそのレビュー・感想・評価

関心領域(2023年製作の映画)
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悪の凡庸。
ルドルフ・ヘスはザ・会社員というかんじにみえました。
ナチスは悪!みたいな過剰な演出をしないとなると、こういう撮り方もあるんだな、と驚きがあった。シンプル。そして、画がうつくしい。神経質なほど、ともいえる。静謐。人が小さく置かれる引いた絵、いちいち面白い絵画みたい、私たぶん好きなんだろうな。(ハイコンテクスト、鑑賞者に前提となる知識がないと十分に味わい尽くせませんが、人類の常識なんですね、ナチスと収容所については。)
切り取り方、人間の描き方が面白い、ちょっとシャンタル・アケルマンの主婦のあれこれを連想した。
ニュージーランドはクライストチャーチのLumière Cinemasという映画館で観ました。映画館の名前が映画の発明者なだけあって、革新的な映画に出会うことができたかもしれません。
監督の他の作品も見てみたいです。
(英語話者の字幕なし映画見るのはかなりキツいですが、これはドイツ語映画で英語字幕があるのでかなりわかりました。あとまあ、世界史や現代史が好きなので、しっかり前提知識があったから楽しめました。テーマ的に、楽しんだ、といってはいけない気がするが。。)



以下は、ラストの演出のネタバレ。


絶滅収容所に任命されて「出世」だから大喜び!妻に電話!(人間らしいね)からの、現代のナチス収容所(博物館)の無数の夥しい遺品(靴など)の数々、の展示部屋をスタッフが掃除してる画。うわ、クール。距離とってる。でも、そのほうが、意味がモノを言うな。。なんにも説明しなくても、モノが語るもの。そこから現代の掃除音が続いたまま、ヘスの場面に一瞬戻り、不穏な音がBGM?となるエンドロールへ。

わー、めちゃクールな芸術を観ることができたわ。クールとは英語的な意味合いでの!

地震で中心部がなんにもなくなった街クライストチャーチでナチスの歴史映画を観たから、なんとなくドレスデンのことも連想し、ちょっと行きたくなったな。災害と戦争とでは意味合いが違いますが。映画の前にはクエイク・シティというカンタベリー地震の博物館に行き、思考し、感情が動かされた一日でした。そして、追憶の橋の前にはイスラエルの国旗を掲げた団体がおり、ハグレー公園にはパレスチナの旗を掲げた二人組がいた。
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