むぎたそ

アアルトのむぎたそのレビュー・感想・評価

アアルト(2020年製作の映画)
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いろんな建築作品が見られるし、人柄と夫婦の手紙中心の構成で興味深く見た。(いろんな人の証言あり、時代が行ったり来たりで、ちょい散漫になるというか、情報量が多いが)。好奇心旺盛なクリエイター、浮気とかしてたけど、結局姐さん女房に甘えてたのかなー。そして若い後妻は先妻にかなり似てたようだ。

二人組(夫婦)で活動してむしろ妻の方が主体だった、みたいな話は「ロバート・キャパ」で最初に驚いたのだけど、女性が配偶者より一歩下がることが求められていた時代にはそういうことは割とよくあったんだろうか。(アアルトはキャパほど妻のほうがみたいなことではないだろうけど。)フェミニズムが広く知られてきてる時代ならではの映画の切り口。つい最近観た、鳥取民藝美術館の展示でも妻たちの功績に触れられていたっけ。

他に競合する人いなかったのかもしれないけど、ひとりの人の作品が世の中にあふれて、皆が持ってる!(この場合は家具だけど)ってすごいよな。確実に世の中のムードを変えたね。マリメッコもそうだけど。国のイメージそれだもんなあ。

ヘルシンキのスタジオと自邸は行ったことあるが、建てられた年代はけっこう違うのだな。

(アアルトは天才の一人なんだろうけど、)クリエイターの厳選はアイデア、でもそれは自分から湧き出るものだけではなく、外の世界の優れた造形物を見聞し刺激を受けた経験の賜物、ということがよくわかり、よかった。(自分が持ってる記憶やスキル、引き出しの組み合わせなんだよな。)イタリアやアメリカ滞在、ル・コルビジュエやフランク・ロイド・ライドとの交流。時には友人の映像作品のアイデアをかなり大胆に自身の建築デザインに取り入れたり(ここまで創造的で自分のものに昇華できていればそれはパクリではないのだ。)
あとは、(家具の場合は)設計図を手掛けるアアルトに対し、実際に製作を手掛ける大工さんの存在・個性・能力が重要で、彼らの名前が(軽んじられず)具体的に挙げられていたのがよかった。(実際に製作パートナーであった優れた職人が亡くなるまでが、彼らの家具デザインのピークだったらしい。)

人間中心のデザイン、使う人の目になること(たとえばサナトリウムを設計するのに患者としての経験があった)。真の意味でクライアントファーストだと、本当に美しいものに辿り着くのか、と目を見張らされる。近年自分が着目している日本の民藝運動にも通じるところがある。

映画を見ながら漠然と、私も創造的な生き方がしたいなと思った。

京都シネマ、初めて行きました。しばらく京都に滞在する予定なので。この前京都来たのはいつだっけ、、
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