ラウぺ

ペナルティループのラウぺのレビュー・感想・評価

ペナルティループ(2024年製作の映画)
3.9
朝6時、岩森淳(若葉竜也)はラジオの声に目を覚ます。「おはようございます。6月6日、月曜日。晴れ。今日の花はアイリス。花言葉は”希望”です」身支度をして仕事に出掛け、休憩中に電気の点検にやってきた溝口登を殺害する。遺体を袋に詰め、会社の裏の川に流して復讐は終了した。翌朝、またラジオの声に目を覚ます。「6月6日、月曜日。晴れ・・・」岩森は溝口を殺害するループを繰り返しているのだった・・・

よくあるループネタの映画ですが、『涼宮ハルヒ』の『エンドレスエイト』でループネタには少々トラウマがあって、ちょっと身構えてしまうところがあります。
とはいえ、この作品はお馴染みのループにもちょっと意外な切り口があって物語の推移に興味が湧いてきます。
これはそれ自体がネタバレとなってしまうので、そこは観てのお楽しみですが、この作品のテーマとしているところは、被害者が加害者を何度も殺害することで、その復讐心のいわば“強度”を確かめるという点にあります。

岩森の復讐は、恋人の砂原唯を殺された恨みによるものですが、ループとは別の、過去の描写で砂原にはある秘密があって、そのために溝口に殺害されたことが次第に明らかになってきます。
また、岩森は溝口を何度も殺すうちにその人物像がどのようなものなのかが少しずつ分かってくる。
二人の間に生まれる奇妙な関係性の変化が面白い。
これを繰り返すうちに、復讐に次第に“飽き”のようなものが湧いてくる。
物語がある種の転換点を迎えて、変転した後に描かれるエンディングでの岩森の様子は目的を果たした、という達成感といったものは皆無で、一種の脱力感に覆われている。(それはそうなるべき物語上の理由があるにはあるのですが)

そこで提示される復讐のループの意味とは何か、といったものが明示的に劇中に示されるわけではないのですが、観ている側としては、犯罪の処罰の意味という根源的な問題に思い至らざるを得ない。
愛する者を殺された恨みによる処罰感情はいつまで持ち続けていられるのか?
それを抱き続けることにどのような意味があるのか?
これは復讐心を捨てろ、という安直な提示ではなくて、正解といえる答えのないなかで、各人が到達しなければならない答えを考える契機を提供している、というところに意味があるのでしょう。

ラストである種の“痛み”を実感した岩森のセリフに、このループから脱却して本当の意味でのリハビリを果たした岩森の心境を垣間見ることが出来るように思えるのでした。
ラウぺ

ラウぺ