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裸のランチ 4Kレストア版の消費者のレビュー・感想・評価

裸のランチ 4Kレストア版(1991年製作の映画)
3.9
・ジャンル
ドラマ/ホラー/トリップムービー

・あらすじ
1953年、ニューヨーク
過去に作家を夢見るも断念し、害虫駆除員として働くビル
彼がいつもの様に仕事をしていると駆除剤である除虫菊と呼ばれる薬を切らしてしまう
それは妻、ジョーンが除虫菊をくすねてドラッグとして使用していた為だった
その後、ビルは突如として麻薬所持の罪で連行されるのだが妻に誘われるがまま自らも使用してしていた為に異様な幻覚に襲われ始める
駆除剤と証明させようと警官達が彼に差し出した巨大なゴキブリはジョーンは敵のスパイだと語り彼女を殺し、その様子をある組織への報告書に書く様に指示
混乱した状況下でビルは図らずして命令通りに彼女を誤射によって死なせてしまう
何も分からぬまま追われる身となってしまったビルは医師、ベンウェイに処方された除虫菊を断つ為の薬、ブラックミートによって更なる幻覚に襲われマグワンプという怪物と出会いを果たしインターゾーンという街に作家として身を潜めるのだが…

・感想
ウィリアム・バロウズの同名原作小説を元にデヴィッド・クローネンバーグ監督が再構成した作品

終始、何が現実で何が幻覚か分からない荒唐無稽な展開や台詞が続き謎のクリーチャーまで現れる怪作
考察記事を少し読んだ上で無理矢理解釈すると作家の夢を秘めた男の苦悩についてなのかな?と

巨大ゴキブリ化し人語を話すタイプライターのクラーク・ノヴァや別人としてインターゾーンに存在するもう1人のジョーン、同性愛が常識化したインターゾーンの奇妙な文化、性倒錯やドラッグ
初めはそれを忌避していたビルが徐々にそちら側へと呑まれていく中での葛藤が本作では描かれている
これは害虫駆除員として普通の暮らしをするか、執筆の中毒性と狂気的な世界に染まるか
その間でのせめぎ合いを幻覚を通して表現しているんじゃなかろうかと思った
ラストでもう1人のジョーンを殺したのも作家として狂気の世界に身を置く決意をしたって事なんだろうと

ただ本作はそういった物語よりも分かりやすく奇妙なゴキブリやその他のクリーチャー、怪物等の存在や性倒錯の蔓延等の視覚的表現が良い意味で気持ち悪くそちらを楽しむべき作品なのかな、とも感じる
デヴィッド・クローネンバーグ監督らしいボディホラー的な要素もあるし理解を諦めた方が鑑賞はしやすい
そういう意味では「イレイザーヘッド」や「KUSO」等と同列の作品なのかもしれない

原作は読んでいないけど本作とは内容も異なる様なのでまぁ読んで理解が深まるという訳でもないのかな
同監督の「ビデオドローム」ほどはハマらなかったけど不思議な映画体験として悪くはなかった
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