スカポンタンバイク

哀れなるものたちのスカポンタンバイクのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.8
これは素晴らしかった。

ヨルゴスランティモス監督作という事で、私としてはやたら下からのカメラワークとか、魚眼魚眼な歪な美しい画面を見せられただけで「よ!ありがとうございます!」という感じで高評価な気持ちなのだが、成人向けお伽話とでも呼ぶべきか、物凄く戯画化された物語とフェミニズムのアップデート(=進化)を提示する現代的な作品になっている所が大変良かった。去年公開のグレタ・ガーウィグ監督「バービー」に凄く類似する作品だと思う。

エマストーン扮するベラ・バクスターは、端的には女性版「フランケンシュタインの怪物」という感じで、ウィレム・デフォー扮するゴッドの人体実験によって生み出された人造人間だ。序盤の振る舞いは正に「見た目は大人頭脳は子供」という表現がシャザム以上にピタッと当てはまるもので、無垢で無知なフランケンシュタインの怪物そのものだ。それがフランケンシュタイン同様に成長していくわけだが、その大きな要素が2つあり、「性」と「学び」が描かれている。特にこの作品が特異なのは、この「性」の部分を女性が生まれ持つ「有益な力」または「幸せになる方法」として、物凄く女性主観のポジティブさで描かれている所だ。
ベラが旅を重ねるで出てくる男たちは常に「自分の人生下でコントロールしたい」という上から目線の願望を持ち合わせている。これは、ベラがコントロール下において満足できている内は両想いの幸せな状況が続くのだが、世界を知る事で、経験を重ねる事で、ベラは男の器を超えた存在へと進化していく。マーク・ラファロ扮するダンカンに代表されるように、彼女を愛する男たちはその進化を共有し続ける事ができないため、無理矢理自分の型にはめ込んでこようとする。実際そんな型に多くの女性がはめ込まれてる現実を考えると、ベラがそういう男を飽きたら捨てていく様は大変痛感なものがある。
では、男とはそんな奴ばかりなのかといえば、そうでもない。それはベラと同じく「学び」によって進化を続ける人たちだ。ちなみに、この映画は肝心の学んでいる事の善悪は問うていないため、最終的に「ベラは大変なものになってしまったんじゃないだろうかw」と筆者は笑いながら映画を終える事になった。
ある意味で、女性のゴッドが誕生したという大変意義深く現代的な映画として素晴らしい作品になっているなぁと感心しっぱなしでした。クリーチャー趣味も大変悪趣味で、筆者は満足でした。是非、劇場へ!