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女王陛下の007のMASHのレビュー・感想・評価

女王陛下の007(1969年製作の映画)
4.5
ジョージ・レーゼンビーがジェームズ・ボンドを演じた最初で最後の作品。ショーン・コネリーとロジャー・ムーアに挟まれる形になったためやや知名度は低いが、007シリーズの中でもかなり面白いと思う。そして007シリーズの中で最も泣ける作品だろう。

まずはそのアクション。ショーン・コネリーの頃の007はなんかもっさりとしたアクションが多かったが、この映画はすごくアクションのテンポがいい。細かいカットを連続させたり、所々で早回しにすることでスピーディーで派手なアクションを作り出すことに成功している。

そして肝心のジェームズ・ボンド。ジョージ・レーゼンビーのボンドは他のボンドとはまた違う魅力を持っている。他のボンドは完全に作られた"キャラクター"であったのに対し、彼はすごく自然体なのだ。おそらく彼はこの映画に出るまでは役者ですらなかったというのもあるが、それにしてはすごく上手い。なんというかボンドというキャラに無理に縛られていないのだ。のびのびと演技をしており、それが余計に彼のスマートさを際立たせている。

ストーリー面でも他の007シリーズとはひと味違う。ボンドが最終的に仕事よりも愛する人を選択をするという、彼のアイデンティティ的な部分を崩す設定であるにも関わず、それと同時に007いうシリーズのある種の終着点のようにも感じるのだ。彼が結婚式でMI6のメンバー(特にマネー・ペニー)に別れを告げるシーンなんかは思わず涙ぐんでしまう。言わずもがな、あの切ない終わり方もである。

ジョージ・レーゼンビーの007はこの1作のみになってしまったが、僕個人としてはそれで良かったのだと思う。あの終わり方をしておいて、この続きを彼がやってしまうのはなんか違う。あれで終わったからこそ、ボンドの最後の選択がより意味をなしてくるのではないだろうか。この作品は007シリーズの中の一つというよりは「女王陛下の007」という一つの映画として素晴らしいのだ。
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