great兄やん

BAD LANDS バッド・ランズのgreat兄やんのレビュー・感想・評価

BAD LANDS バッド・ランズ(2023年製作の映画)
4.3
【一言で言うと】
「根無し草の“簒奪”」

[あらすじ]
ネリは弟のジョーと特殊詐欺に加担し、他者の富を掠め取りながら生き伸びてきた。ある夜、ふたりは億を超えるほどの大金を、思いがけず手にしてしまう。それまで金を引き出すだけだったふたりに巨悪が迫る一方、大阪府警の特殊詐欺合同特別捜査班も動き始め...。

重厚な“渋味”に酔いしれる143分間。アクの強いフィクションとヘビーなアクションの風味が効いた『ヘルドッグス』とは違い、アンダーグラウンドにおけるリアリティへの“解像度”がより鮮明になった今作は、まさに舞台である大阪“西成”のリアルと見事調和を保っていましたし、演者然り監督然りそこに溶け込める“一体感”を産み出すのがとても巧いようにも感じた。

ここ最近『燃えよ剣』以降年1ペースで作品を撮ってる原田監督ですが、やっぱりこういうクライムサスペンスを描いた作品の方が個人的には好きですし、原田監督の生み出す独特なリズムはやはり現代劇との相性が良いようにも思いましたね🤔...ていうかこんな大作を年1ペースで公開できる時点でバイタリティエゲツないっすよね(^◇^;)

とにかく単純にストーリーが面白いのもあるが、なんと言っても原田監督特有の“ケレン味”の効かせ方がメチャクチャ上手い。特殊詐欺グループの実情を描く“リアリティ”と映画的で突飛な演出やキャラが目立つ“ケレン味”のバランスの良さ、そしてその平衡感覚が優れている事により写実的過ぎず、かと言ってキワモノ過ぎてない絶妙なグルーブを見事に生み出している。

『ヘルドッグス』然り映画的であるとはいえ、あの絶妙にフィクション過ぎない世界観はやっぱり観ていて興味深いですし、セリフ回しといい原田監督ならではのテイストが十分に発揮していましたね😌...

それに役者陣の魅力も素晴らしいですし、安藤サクラはもちろんのこと山田涼介のあの無邪気に狂ったキャラはまさしくベストアクトに相応しい立ち振る舞いでした!!😆坂口健太郎といい大人しめの俳優が狂った役をやるギャップはある意味最高の“化学反応”ですよね笑。
その他生瀬勝久のドス黒い卑劣なボスや吉原光夫のシニカルで正義感溢れる刑事も良かったのだが、個人的MVPは“曼荼羅”こと宇崎竜童だと思う。あの前半と後半でのキャラの変わりようは間違いなくビックリしますよ😅...

とにかく性に金に暮らしにと、様々な“搾取”に虐げられてきた者が起こす反撃の狼煙にドキドキしつつも爽快感が込み上げてくる、弱者の“知恵”は強者の“略奪”よりも勝る事を示した一本でした!!

特殊詐欺に講じる前半から“大金”が絡むスリリングな後半と、テンポよくスムーズに展開されるので全く飽きなかったし、後半に関しては安藤サクラ演じるネリの知識と知恵が余りにも冴え渡り過ぎて理解度がマジで追いつかなかったです笑。

舞台が舞台な故関西弁でスピーディーに捲し立てるセリフ回しが聴き取りづらいなど、多少なりとも気になる点はあったが、それでも没入感は半端ないし面白いのは確実に保証ができる映画だった。原田監督もリドリー・スコットみたいに、こういう渋くて硬派な作品をどんどん作り続けて欲しいですね😌...