本作『リトル・ワンダーズ』は予告編で「全映画に刺さる!」とかそんな文句を言っていたので天邪鬼な俺として(あんまり期待しないでおこう…)と思いながら観たのだが、いや中々に面白い映画でしたね。まぁ生涯残り続ける一本とかではなくてあくまでも中々面白かったな、というくらいの映画ではあるのだが。
お話はというと、舞台はワイオミング州の田舎町なのだがそこで暮らしている幼馴染みの三人組は万引きも辞さないクソガキ共。彼らは工場にある新作ゲーム機と思われるものを盗み出して自宅でプレイしようとするのだが、何とテレビにロックがかけられていてゲームをすることができなかった! ロックを解くキーワードを知っているのは風邪をひいて寝込んでいる母親だけ。そして彼女は「ブルベリーパイを買ってきてくれたらパスワードを教える」と言うので材料を買い出しに行くが三人は最後の一個だった卵を先に買われてしまう。その卵を奪い返すために三人のクソガキ共の冒険が始まる…というものです。
本作は宣伝で名作子供映画である『グーニーズ』の現代版、的な売り出し方をしていて実際に監督は多分かなり『グーニーズ』も意識してるんだろうなぁとも思ったが、クソガキ感というのは本作の方がより上だった気がしますね。上記したように映画はいきなり窃盗の場面から始まるし、その後も余裕で犯罪行為を行い飲酒もしちゃうガキ共なのである。元ネタたる『グーニーズ』はまだやんちゃとかわんぱくなガキという程度だったが本作のメイン3人は完全にクソガキです。
でもそこが良かったな。クソガキッズ映画というのは大抵面白いものだが本作もその例に漏れずに面白かったですよ。まぁ『グーニーズ』のような冒険モノとしては敵側たる大人陣営の魅力がイマイチというか、フラッテリー一家のような魅力溢れるキャラクターではなかったのが残念なポイントではあった。何やら怪しげな魔術を使う女頭目(敵側のリーダーが女性というのも『グーニーズ』オマージュだろうか)とかはもっと色々と深掘りできそうな感じなのだがそこあんまりやってくれないんですよね。子供の魅力を描くためにはやっぱそれと対峙するポジションの悪役大人をじっくり描いてほしかったのだで残念。奴らが『クレヨンしんちゃん』の劇場版に出てくるような濃い面子だったらもっと面白かったんじゃないかなぁという気はしました。せっかく魔術的な力が出てくるんならそこにもっとトンデモな設定欲しかったなと思う。
ただ、本作はそういう風に魔術(人を意のままに操る的な感じ)というトンチキな要素がありながらも割とリアルというかビターな味のする展開もあって、そこの苦みは結構好きでしたね。何度もタイトルを挙げてる『グーニーズ』と比べたらシンプルに楽しい娯楽活劇というよりもちょっとしんみりするような場末感というかな、現実を感じてしまうような部分、具体的に言えば敵側のおっさんのくたびれ感とかアメリカの田舎の行き詰ってる感とかが滲み出ててそこにも味わいのある映画だったなぁと思いました。
ガキたちの行動もそれがシンプルに楽しいからやってるというよりも退屈な日常に抗うためにやるしかないんだっていう感じを受けたんですよね。ま、その辺が個人的には好きだったんだけど。しかしそういうビターな部分がありつつ、何の説明もなく出てくる魔術的なパワーというハッタリも効いてたりして、なんじゃそら、と突っ込みながらも楽しく観られる映画でしたよ。俺が現役キッズなら本作を観た後はあの呪文を唱えまくっていたであろう。あと16ミリで撮られた映像はやはり良い。
なのでトータルでは普通に面白い映画であった。最後に非常に個人的なことを追記しておくと、主人公たちクソガキッズたちが結成している“不死身のワニ団”のリーダーであるアリスちゃんが俺の初恋の人にめっちゃ似ていたのでそれだけでスコアを4.6くらいにしてもいいかなと思ったんだけど、余りにも恥ずかしいのでそれは思いとどまりました。