すずき

絞殺魔のすずきのレビュー・感想・評価

絞殺魔(1968年製作の映画)
3.6
ボストンで連続殺人事件発生!
当初は元看護婦の老人ばかりを標的としていたが、やがて被害者に共通点はなく、女性ということだけ。
警察はありとあらゆる方向から、犯人を割り出しにかかるが空振りばかり。
そんな警察をあざ笑うかのように、被害者は増えていく…

前半と後半で趣向が変わるタイプの映画。
前半は、事件の概要と警察の捜査を忙しなく描く。
印象的なのは、一つの画面内に別々の情景を映し出すスプリット・スクリーン(画面分割)。デ・パルマ監督も多用してたよね。
ドアの向こう側とこちら側を同時に描いたり、沢山の警官たち及び市民の様子を一度に映し出したり、実験的な演出は今見ても新鮮。

そして警察の懸命な捜査(総当たりというか人海戦術というか)により、次々に容疑者という名の変質者が捕まる。
いやー、全員実に怪しい上。
「名探偵コナン」だったら声優の豪華さで犯人が分かったりするけど、本作の容疑者の吹替声優は皆いい声。
2回ぐらい、こいつが真犯人か!って思ったけど、空振りばかりだった。

最終的には行方不明者を捜索するTV特番よろしく、霊能者に捜査を依頼までするのだけど、真犯人とおぼしき人物(吹替・広川太一郎)は別件であっけなく逮捕される。
ここからが後半、映画の展開はガラリと変わる。
巻き気味だったテンポは突然スローになり、犯人の混乱する内面にクローズアップする展開が続く。
その犯人の目から見た情景のイメージ描写が、幻想的というか、悪夢のような描き方でこれまた実験的。
病院内の真っ白の部屋の中、混乱する頭で自らの犯行を自供するクライマックスの長回しは震える。

映画のストーリーだけを追うと、退屈な展開と地味なクライマックスと感じる人もいるかもしれない。
カルトな魅力を持つ本作、人は選ぶが数寄者は是非!