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ザ・クリエイター/創造者のkuroのネタバレレビュー・内容・結末

ザ・クリエイター/創造者(2023年製作の映画)
2.7

このレビューはネタバレを含みます

さすがはスターウォーズシリーズの監督だと思うくらい雑な設定がマイナス。わかりやすい反米意識をあおるシチュエーションもくどい。ノマドといい超大型戦車といい,圧倒的大兵器で人民を蹂躙するアメリカに対して,アメリカ兵を警察が逮捕する人権に配慮したニューアジアを対比させたいのだろうけど,勘亭流フォントをつかった章題やクラシカルな外観と低機能な翻訳機などのとんでもアジア感をみると反米であってもアジアに対する理解はどこまであるのかと疑問が残る。たしかにチベット仏教の僧侶服を着たロボットの姿は画としては見栄えするのだが,その表面上の美しさの陰になにかあるのではないかと疑ってしまう。渡辺謙の日本語と英語台詞の使い分けの意味が分からなかったところも,アジアらしさを盛り込んでおけばいいやといういい加減さに思えた。

スターウォーズでデススターを破壊したところで戦争が終わらなかったように,ノマドを撃墜したところでニューアジアへのアメリカの殲滅作戦が終わるわけではないので,何のカタルシスの解放にもなってない。嫁を探して,嫁の安楽死を実行したのに,嫁の意識をコピーしたAIロボットに会えてうれしいという,なんとも覚悟の足りてないダメな男の話。

人間の意識をコピーしてAIに載せるというアメリカとニューアジアの技術の悪魔合体のエンディングは監督にとってはいい話なのだろうなと,あの議論の分かれる癖の強さにはまれるかどうかが作品の評価の分かれ目でもあると思う。

あと,自走自爆ロボットが出撃前に別れの挨拶を言うのだけど,あのシーンに心動かされたひとはニューアジア側という自覚が必要。それをアメリカが兵器で実装する意味がよくわからない。たぶん大佐は激怒しているw

主人公に主体性がなく,嫁の尻(残像)を追いかけてふらふらしているので,感情移入できない。「お前は嫁の一体どこが好きなのか」という問いが前述の嫁の意識をコピーしたAIロボットの登場によって解答が難しくなった。

地獄の黙示録+ブレードランナー+スターウォーズ+童夢のようなつぎはぎだらけのストーリーと設定がマイナス,タイの山岳・水田地帯の風景がプラス。
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