じゅ

鯨のレストランのじゅのネタバレレビュー・内容・結末

鯨のレストラン(2023年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

昔築地で鯨の竜田揚げを食ったことある。めっちゃ旨かったことを思い出した。


鯨を使う人、獲る人、食す人、調べる人、あと諸々バランスを保つための国際機関の人。各々の立場や知見から語られる、鯨に関する・鯨と共にする文化、生活、歴史、生態、国際問題。特別視され、保護を過剰に訴える声もよく聞く鯨について、客観的な事実に基づき、冷静な態度で付き合い方を模索しようとする。

だいたいそんなかんじ。


まじで旨そうだった。それが感じたことの半分くらいを占めるかも。
なんでも作れすぎだな。子供から大人まで鯨一本勝負で誰でも喜ばせられそう。

他の半分くらいは、図鑑に載ってそうな情報が興味深かった。ヒゲクジラとハクジラに大別されてしかもそれぞれの中にも様々種類があることを描いた図解とか。図鑑に載ってそうと言っても図鑑をなかなか買わないし。
マッコウとかザトウが目立ちがちで、それには工業的とか興行的な事情があるのだと。どったがどっちだったっけか。一方が身体から採れる脂が工業用の油としてめちゃめちゃ有用だったから昔アメリカで随分乱獲されたとか。他方は動きが大胆なもんで、所謂ホエールウォッチングで注目の的だったとか。前者がマッコウで後者がザトウだったかも。
調査捕鯨した個体の歯の断面の層を見て年齢を推定するんですって。そういう学術的な話大好き。


あとはまあ、いろいろ語られてたけど程度の感覚があんま掴めなかったかんじ。
世界に何万頭いるっていう話があって、まあ十分にいるねっていう話なんだろうけど、どれくらい減ったら危険な水準なのかとかついでに教えてくれてもよかったのにと思ってる。(聞き逃したかも。)各国の捕鯨の量の推移を見せてくれてたから、そんなんと照らし合わせて昨今のペースだとやばいのかやばくないのかみたいな議論はできると思う。
鯨は人が食う6倍の量の魚を食うという話もあったけど、まあインパクトは強いけどだったら何だろうみたいな感覚もうっすら。いっせーのーでで捕鯨を0にしたら海の魚が◯年で喰らい尽くされるってんならびびるけど。

定量的なところはピンときづらかったけど、そうじゃない部分はそうだなと思ったところが多々。
まあ、化学的なプロセスを経た飼料を食して育った牛とかより勝手に海の中で育った鯨は自然なものだ、みたいなこと語ってた部分は唯一「だから何?」ってかんじ。そこは置いとく。
ヴィーガンやるのは勝手だし俺はお前らのスタイルに口出ししないからお前らも黙っとけみたいな話は好き。よく聞く「多様性」とかいうやつの1つの在り方だと思ってる。(鯨の話から飛ぶけど。)それより何より、話者が一番熱くなってた気がするw
まあ俺自身が動物は殺さずその分植物を殺すのを是とする感覚をよくわかってないので。鳴かない動かない植物を刈ることは命を奪る行為を見なかったことにしやすいってのはあるのかな。俺の故郷みたくどこまでも田畑が広がる風景って、時が来たら刈り取られるための生命が規則正しく並んでる異様に不自然な風景にたまに見えたりするけど。結局俺らが生まれ持った身体に都合のいいように何でもかんでも食うのが自然にとって効率いいというか、命を無駄にしなそうみたいな定量化しようのない感覚があるけど、まあ埋まらん溝は埋まらんわな。
ドイツから来たタレントが、築地市場でマグロが投げるように運ばれてるのを見て勝手に心を痛めてたみたいな話。「そういうことじゃない」と思ったみたいなことをドイツのハーフの彼女が言ってたけど、そうだなあってかんじ。個人的にいつか何かの映像で、牛の額に杭みたいなのを打ち込んで吊るして血を抜くみたいなのを見たことあったような覚えがあるから、そうだなあってかんじ。


まあどうあれ、埋まらない溝は埋まらないだけろうけど、せめて知るべき客観的事実は互いに知った上で埋まらなくありたい。上記みたく妄想と感情でうだうだ言うのがぶっちゃけ一番キモチイイけど、本当に憂うなら知らねばならん。もし溝が埋まればそれが一番だけど、知るべきことを知っても感情は立ちはだかるものだと思うから、それで埋まらんのなら仕方ない。
じゅ

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