じゅ

ゴースト・ドッグのじゅのネタバレレビュー・内容・結末

ゴースト・ドッグ(1999年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

RZAとフォレスト・ウィテカーがすれ違い様に一言交わすとこかっこよすぎて震えるて。


ある殺し屋、ゴースト・ドッグ。ある建物の屋上に小屋を構えて鳩と暮らし、『葉隠』を愛読し、武士道を重んじる。8年前、3人組の白人に襲われていたところをルーイというマフィアに救われた。その恩のためルーイへ忠義を抱き、4年前から12件もの汚れ仕事を請け負っている。
ルーイにはボスのヴァーゴがいる。その娘に組織の構成員フランクが近づいたため、フランクは粛清されることになった。送り込まれたのはゴースト・ドッグ。一応は組織の者であったフランクを消したことでゴースト・ドッグも、そして難色を示したルーイも命を狙われることになる。組織は建物の屋上で鳩を飼うす黒人を片っ端から殺し始めた。
ゴースト・ドッグは主のルーイを護るため、ヴァーゴ以下組織の人間たちを消しにかかった。親友だというフランス人のレイモンと互いに通じない言葉を交わし、偶然出会った少女と本のやり取りをしながら、ゴースト・ドッグは忠義の仕事の準備を進める。全て成し遂げた後、ゴースト・ドッグの前に現れたルーイは彼を撃った。ゴースト・ドッグ自身にはそれでよかった。彼に主のルーイがいるように、ルーイにもまた主のヴァーゴがおり、仇討ちは当然のことと思っていた。ゴースト・ドッグはルーイに最期の頼みを託す。少女に貸したのと同じ本、元々ヴァーゴの娘に借りていた『羅生門』を渡し、読んで感想を聞かせてくれと頼んだ。頼みを引き受け、逃げるようにルーイは立ち去る。倒れたままゆっくりと目を閉じたゴースト・ドッグの傍に1羽の鳩が飛んできて、そして少女とレイモンが駆け寄る。


目の前のものの意味わかんなさというか、そんな要素が大切だったような気がしてる。でも何故か通じ合えたり、当然通じ合えなかったり。

ゴースト・ドッグの親友のレイモンはフランス語しか使えなくて、英語しか使えないゴースト・ドッグとは互いに言葉が伝わらない。レイモンは英語を覚えるのを一回挫折したけどまた何らかの形で習いたいと思っていて、ゴースト・ドッグはなんとなくで乗り切ってる。
なのに何故か結構しっかり意思疎通はできてる。日が暮れてきたから仕事に行くとか、スーツをあげる/もらうけど大きいから◯◯(←どこだっけ?)人の仕立屋に直してもらうといいとか、最近腕を吊った白人がうろうろしてるけどそれは友人だから大丈夫だとか。習慣とか身振りの効果もあろうけど、スーツのくだりは見事だったなと思う。

レイモンが空の色を見に出た屋上から、独力で木の船を建造する爺さんを見つけた。フランス語話者のレイモン(と英語話者のゴースト・ドッグ)の言葉は、スペイン語しか解さないその爺さんには伝わらない。
レイモンが声をかけても聴こえはするけど何言ってるかわからない。作業スペースからどうやって降ろすのかとか、問うたところで伝わらない。交流の長さとかの問題なのかもしれない。レイモンがゴースト・ドッグに初めて会った頃もそんなかんじだっただろうか。

昔の日本とかいう摩訶不思議の国に想いを馳せる。『葉隠』に『羅生門』、そんな不思議の国で記された書を、しかし読むべきだと人の手を伝って拡散されていく。
まあ、ゴースト・ドッグが読み取った風にあの少女が『葉隠』から武士道を読み取らない(彼女なりの読み取り方をする)と思うし、ヴァーゴの娘とゴースト・ドッグと少女とルーイでそれぞれ違う『羅生門』の感想を抱くのだろう。本(というか物語)ってそういうもんだろう。だから、例えば『葉隠』がゴースト・ドッグから他者への心の媒体になったりはしないんだろう。そういう意味では通じ合えん。


武士道なー。よく知らないけど、ルーイがゴースト・ドッグを撃った理由はゴースト・ドッグ本人が思ったのとは違う気がしてる。

あの化け犬にすれば、主こそ全てにおいて絶対で、命を賭して主をお護りして、主人の死に切腹する決意を固めてて、たとえその末に主が死ねと言おうがそれも正しい。
昔のジャンプ漫画の『BLEACH』に狛村左陣っていうキャラがいて、彼が強く忠誠を誓う山本元柳斎重國について「あの方が是と云えば死すらも是である」みたいなことを言ってたけど、あんなかんじだなあと思いました。

BLEACHは置いとくとして、ルーイはそういうのとは違うと思ってる。べつにゴースト・ドッグがボスのヴァーゴを殺した仇討ちで彼を撃ったわけではないだろう。あいつ終始ずっとただただ混乱してただけだと思うぞ。わけわからんって言ってたし。
ルーイはべつにThe Way of Samuraiとかたぶん概念すら聞いたことないと思うし、ゴースト・ドッグのことを自分のために命を捨てる忠実な家来だと思ったこともないのではないか。日頃ほとんど姿も現さないで伝書鳩で短文をやり取りする程度の間柄だったし。たしかにボスのヴァーゴは殺されたけど、忠臣蔵みたく仇討ちしたかったわけじゃなくて、命を狙われた超凄腕の殺し屋が逆に牙を剥いてきてめっちゃ怖かっただけだと思う。何故か命を獲られず肩に銃弾を2発撃ち込まれて、「こきつかった自分を少しずつ痛めつけて最後に一番残酷な殺し方をしようとしてるんじゃないか」とかうっすら考えてたかも。


犬は何だったんだろう。ベンチに座るゴースト・ドッグを見つめてたとこと、どっかのシーンで夜の路地でゴースト・ドッグを見つめてたとこ。
少女の言う通りゴースト・ドッグさんのことが気になってたんだとおもいます
じゅ

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