じゅ

イコライザー THE FINALのじゅのネタバレレビュー・内容・結末

イコライザー THE FINAL(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

2C2Lマッコールさん、言うなれば敵組織の強さをまず序盤で見せつけとく用みたいな鮮やかな制圧の仕方するところ大好き。1人で。


冒頭からもう穏やかじゃないもんな。

シチリア島のブドウ農園に駆けつけた男と息子らしき少年。門をくぐったらもう死体がいっぱい転がってる。建物の外にはショットガンを手にそわそわする手下。男は少年を車に残し、手下を連れて建物の中へ。死屍累々を跨いで地下へ行くと、もう2人の手下と、謎のアメリカ人。「奪われたものを取り戻しに来た」と言うアメリカ人は、瞬く間に3人の武装した手下を殺すと、男の頭を潰して腰に下げた鍵を奪った。
クラッキングと麻薬取引で稼ぐ悪党が営むブドウ農園から目的物を回収したロバート・マッコール。車に残っていた少年を見逃したが、その少年に背中を撃たれた。どうにか本土まで辿り着くも、道中で気を失った。通りがかった警官のジオに拾われ、町医者のエンゾに助けられて一命を取り留める。目が覚めるとそこはイタリア沿岸部の町。余所者を見る目だった町民も、徐々に米国人"ロベルト"を受け入れていく。
その町は、リゾート化を目論むイタリアのマフィアに狙われていた。マフィアを仕切るヴィンセントは、弟のマルコを遣って町への圧力を強める。そんなマルコが目をつけられてしまったのが、最近町へ来たアメリカ人。ディナーで賑わうレストランに手下を引き連れて押しかけたところを締め上げられ、激昂して殺そうとしたところを逆に路上で手下もろとも殺された。
弟の死を受けて報復のため町へ来たヴィンセント。団結して例のアメリカ人を庇う町民の圧に押されて仕方なく引き返すが、明日殺すと意気込む。その夜、ヴィンセントの邸宅に侵入者が現れる。10人近くいた警備を極めて静かに始末し、ヴィンセントに襲い掛かる。目を覚ましたヴィンセントは、例のアメリカ人に自身の組織の資金源であった麻薬を致死量飲まされていた。心臓が止まるまで残り6分。ヴィンセントはよろよろと逃げる。邸宅を飛び出し、門をこじあけ、道に飛び出すと車に轢かれ、暗い路地で這って死んだ。

"憂慮する市民"による匿名の通報で、農園から始まる未知の犯罪組織の捜査にあたっていたCIAのエマ・コリンズ。通報者の正体のマッコールという人物から、農場から回収したものを託された。それはダイヤーさんなる人に宛てた366,400ドル。クラッキングで奪われた年金だった。かつてマッコールがLyftで乗せたことがあるというダイヤー夫妻は、年金を取り戻したことで家を売らずに済んだ。
マッコールはコリンズへ1冊の手帳を贈った。それには彼の亡き親友の娘に宛てた、母親も誇りに思うだろうとのメッセージが添えられていた。


マッコールさん、こわあ。やたらいたぶってさっさと死なせてやらんとこに強烈な憎悪を感じる。やっとこさ這って動けるくらいの農園のおっちゃんの尻、なんでわざわざショットガンで撃ったん。ヴィンセント薬付けにした上でなんでわざわざ結構な人数の目撃者出してまでゆっくり死んでくとこ眺めてたん。人が野垂れ死ぬとこを歌いながら眺めるのこわあ。さながら猟奇殺人鬼。おかげさんでバルバロイことヴィンセントが手下に署長の手切り落とさせた場面の記憶すっ飛んでたわ。
ワインのコルク抜く螺旋のやつ顎の下から刺すの1作目でもやってたけど、なんでその死体を天井のステンドグラス(?)かち割って吊るそうと思うん。ヴィンセントの邸宅はあの時初めて行って、構造とか知らないはずだから、たぶんその場の思いつきだよな。ホラーで括られる類でめちゃめちゃに殺しまくる奴のやり口じゃん。マイケル・マイヤーズとかの類の。監視カメラ映像見てるやつの背後にすっと現れたとことか怖いて。ホラーで括られる類でめちゃめちゃに殺しまくる奴のやり口じゃん。
地味に冒頭で転がってた顔面に鉈刺さってた死体好き。マッコールさんもなかなかの死体アート作るな。
てか、表情変わらないのなんでなん。

それであって、さっきまで無茶苦茶に殺してた時の空気からは信じらんないくらい全力のハッピーエンドに振るの超楽しい。精神振り回されすぎてなんかもう気分いい。


マルコに言った、3週間前ならよかったけど今は俺がいてこの町も人も好きになってるからやめろ、みたいなやつまじでこのシリーズを象徴してたと思う。偶然マッコールさんと関わった善良な市民がどうしようもなく強大な悪から救われて、偶然マッコールさんと関わってしまったどうしようもなく強大な悪がもっと強大な力で潰されるっていう。

ロシアだかどっかから来た歌手志望の少女はアメリカに移り住んだ場所にちょうど偶然マッコールさんも住んでて、偶然同じダイナーに同じ時間帯に通って何気なく言葉を交わしたことがあった。その少女を売り物にしてたロシアのマフィアは、そんな彼女を殴った挙句半殺しにしたのをマッコールさんに知られてしまったからただただ一方的に壊滅させられた。
ついでにその頃マッコールさんが偶然勤めてたホームセンターに入った強盗はその後どうやらこっそりハンマーでしばき倒されて、母の形見の指輪を強盗に奪われた同僚は何故か翌日レジにその指輪が入れられているという奇跡を体験した。

ある本屋を営む女性は、読むべき100冊なるリストの本を読破するために偶然マッコールさんがその店に通っていたから、元夫が復讐のため誘拐した娘を連れ戻してくれた。元夫の方は、身体の痛みあるいは改心の痛みを強いられることになった。
デイヴはまあ、そもそもマッコールさんと同業者になっちまったのが運の尽きだな。

俺も今後のためにアメリカ行ってマッコールさんのタクシーに乗っときたいな。


そんなマッコールさん、初めて会ったエンゾに善人か悪人か問われて「わからない」と。偶然行った先々で不運な困難に打ちひしがれる人々を助けてるけど、夢に見るのは彼自身の手で惨殺される者たちの姿。
救われるべき人を世の理不尽から救うためとはいえ、そんで相手がしょーもない悪人とはいえ、人を殺しまくってる自分が善だとは胸張って言えないわけだ。俺は人殺したことないのでわかんないけど。

少年に背中撃たれたとこがわりかし印象に残ってる。
マッコールさんにとって子供ってどんな存在だっただろう。というか、あの少年を何だと思っただろう。善とか悪とか、そんな葛藤からそもそも無縁の無垢な存在?少なくとも、あの農園の中じゃ唯一手を出さず背中を向ける存在だったんだよな。それが殺すべきガチクズの車に乗ってた、おそらく息子と思しき人物であっても。
そんな、悪の対極にあると思ったであろう者に撃たれたわけだ。思わず銃口を向けて詰め寄る。少年が逃げる。マッコールさん倒れ込む。倒れ込んだ時に自分の頭に銃を突き付けた時、何を思ってただろう。一連ずっとめちゃめちゃ動揺してた。頭に銃口向けたとき引き金引いてた?弾切れでカチッて鳴ってたような気がする。
想像するに、自分の行いの善悪を見失ってる中で、悪の反対側に在るはずの子供を助けることだけは善いことに違いなかった。そんな悪の対極だったはずの子供が銃を手に意図的に人に危害を加える悪事を行って、あるいは自分が悪の対極からの鉄槌をくらって、自分はその子供を一瞬ながら殺そうと思った。この数秒の出来事で、マッコールさんの曖昧な善悪の大きな拠り所が崩壊した。っていうかんじかなあと思ってる。

まあでも、「わからない」っていう返しは善人しかしないんだと。町で一番慕われてるじいちゃんが言うんだからそうなんだろう。


あと親友の娘さんにはカフェで注文した菓子くらいちゃんと食ってから立ち去るようにお伝えしといて。
じゅ

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