じゅ

ドミノのじゅのネタバレレビュー・内容・結末

ドミノ(2023年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

ウィリアム・フィクナーさん、超超超まじでぶちくそかっけえ憧れる部類のおっちゃんだけど、走るとくそだせえな。
走るとこ以外はやっぱ信じらんないくらいかっこいいな。


ローク刑事の娘のミニーが誘拐された。犯人に記憶はなく、死体も見つからず消息不明。そんな最中に飛び込んできた通報によれば、オースティン銀行で23番貸金庫の強奪事件が起こるとのこと。現場に現れた怪しい男に先回りしてロークが貸金庫を開けると、中には「レヴ・デルレーンを見つけろ」とのメッセージが添えられた娘のポラロイド写真が。例の怪しい男が娘の消息を知るとみたロークは男を追い詰めた。しかし男は応援の警官を謎の力で操りその場から逃げた。
ロークらは通報元を特定し、手がかりを求めて足を運んだ。通報者は占い師のダイアナ。曰く、その男、レヴ・デルレーンは他者の意識を操る「ヒプノティック」の使い手である。ダイアナも使えるがデルレーンの能力は他を圧倒するという。そう話している間にも神出鬼没のデルレーンが迫る。ロークとダイアナは逃げつつ協力者を探した。事態は「ドミノ計画」に関係するという。その計画ではヒプノティックの強力な使い手を束ねて世界を操ろうとする。ハッカーである仲間の隠れ家に逃げ着くと、情報収集に着手した。そこでロークは、彼の妻がドミノ計画を進める機関に属していること、ダイアナは偽名で本名はローク姓であること、「ドミノ」とはロークの娘ミニーの本名「ドミニク」に由来することを知る。
そこでロークは目を覚ました。真っ白な広い部屋に、ダイアナやその仲間、警察の同僚、そしてデルレーンの姿。一連の事件は全てヒプノティックでロークに見せられていた幻だった。その目的はミニーを手に入れること。ミニーは互いにヒプノティックの使い手であるロークとダイアナの間に生まれた。そんなミニーはこれまでにないほど強力なヒプノティックの使い手だった。ロークは娘には機関に支配されず自由に生きてほしいと願い、彼女を隠した後に自らの記憶を消した。機関は「誘拐された娘を捜す刑事」の筋書きでロークにミニーの居場所を思い出させようとしており、今回で12回目だった。ロークの記憶をリセットしての13回目、これまでの筋書き通り"デルレーン"を追うはずだったロークが脱走した。貸金庫のポラロイド写真が記憶の鍵になっており、その鍵がついにロークの記憶を呼び戻した。レヴ・デルレーンとは人名でなく娘の居場所を表すアナグラム。娘はロークの里親が預かっていた。
娘と再開したロークの後から機関の者たちが追ってくる。そんな追手をミニーがヒプノティックにより操り、互いに撃ち合わせる。母を機関の洗脳から解き、"デルレーン"の男に自らを撃たせた。ロークの家族は機関からの自由を得た。

機関が乗ってきたヘリに乗ってローク、ダイアナ、ミニー、ロークの育ての母が去る。育ての父は機関の者たちの死体を片付けてから行くと言い、その場に残った。父は"デルレーン"の男が自らの腹を撃ち抜いた拳銃を拾い上げる。
その死体は、ロークの育ての父。拾い上げた者は"デルレーン"の男。


なんか予告編で観客は何が現実か分からなくなる的なこと言ってたけど、こちとらいつでも「実はとんでもない大嘘かまされてるかもしれない」という心構えでいてるんよ。

でどれが現実なんすか??

超能力だろうが技術だろうが人の意識を操って思い通りの光景を見せるのってとてもおもしろいけど、二転三転させると(なんなら一転させたところで)もう取り返しがつかなくなる感覚がある。どんでん返しをどんでん返せる力を持つ連中がやり合ってるわけだから。実は最初から裏があったけど、その対策を予め打っていて、でもそれを読んでさらにその対策を予め打っておくとか、準備合戦をいくらでも後付けできてしまう。結果として、これが結末ですよと見せられたものを素直に受け取れない。
作業療法の先生のボールペンとんとんからハッカーの隠れ家まで、ロークが駆け抜けた世界は全部彼の意識の中に構築したハリボテだった。脱出したロークを追ってきた機関の人たちもいつの間にか意識の中にロークの里親の家を構築されていた。ロークの里親を撃ち殺したのもヒプノティックで見せられた映像に過ぎなかった。最終的に、機関のボスっぽい人(デルレーンを演じた人)がいつの間にかロークの育ての父と入れ替わっていた。そうやって出し抜き合いになると、最後のデルレーンの人が死んでなかったのも本人が出し抜いたと思ってるだけの可能性がほんのりあり得る気がする。ふと思い出したけど、007のシリーズでもエルンスト・スタヴロ・ブロフェルドが替え玉を用意するようになったことがあって、そうやっていくらでも裏を作れる構造にしてしまったらもう何しても完結しなくなる。

まあでも、楽しかったのでいいかあ。


ローク"刑事"が相棒の車に乗り込もうとした時にゴキブリを踏み潰したのは何なんだろうと思ってたけど、本当に何だったんだろう。
同じことを繰り返してるのを強調する演出だったのかな。最初から12回目まで、さらに13回目も用意された筋書き通りにロークが幻の中で操られているっていうのを、スクリーンの外の俺らに見せつけるメタ的な演出。
あるいは、ロークにヒプノティックをかけるとか、効力を維持するなり強めるなりの仕掛けだったとか。ヒプノティックって言葉とか視線とかを使ってかけるって言ってたから、まあ他にも様々なものを使うのかも。虫の死骸とかそういうさりげないものって、いわば魔術師でいう詠唱みたいなものなのかも。

ちなみに毎回ゴキブリじゃなきゃだめなんだろうか。まあヒプノティックの使い手がゴキブリじゃなきゃだめと言うのならだめなんだろうけど。
なんかよく知らんけど、さりげなくロークの目に見える情報を少しずつ変えてったら違う結果になったりしないだろうか。偶然ロークの記憶の鍵を開けちゃうのを狙って。流石にそんなことにはならんか。


ちなみに、自分を刑事と思ってる時のロークがヒプノティックを使えちゃったくだりって筋書き通りなんだろうか。あの袋小路でヒプノティックを発動できなきゃしゃーない気はするけど、使えたら使えたで娘が消えた以外の謎がロークの中に生じることになって雑音になる気もする。機関としてはロークには消えた娘の謎に集中してほしいと思うけど。
ハッカーの仲間の家でもしロークが諸々気づかなかったらその後の展開はどうなってたんだろう。11回目までであの場面を越えたことはあったんだろうか。仮にそうだとしたら、用意した筋書きに終わりが来たらどうしてたんだろう。ロークに一旦ねたばらしして筋書きの続きを用意した上でまた記憶をリセットしてヒプノティックにかけるのかな。

だとして、娘の居場所を機関の皆さんすら知らないのに、どう筋書きの続きを作るんだろう。作家さんがプロットなしに小説を書き進めてるというか、研究職が結論なしに論文を書き進めてるというか、そんなかんじに見える。
けっこう行き当たりばったりで筋書きを書いてて、途中で付け足したり多少作り替えたりとかを繰り返してきたのが本作冒頭に至るまでの11回だったのかな。

というか、俺の中で暗黙的に「機関はローク刑事が行方不明の娘を見つける筋書き」を書いてると思ってるけど、本当にそうなんだろうか。そうってことにしよう。


あと、終盤のあのドミノのメイキングを見てみたいと地味に思ってる。
じゅ

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