楽しかった!長いけど。エンディングのバイーア聴きながら嬉しくなってニヤニヤしてた。オープニングのタイトルフォントがとんでもなくポップで好い。あれをポスターにしてほしかった。『オルエットの方へ』もそうだったけどロジエの作品はフォントのチョイスが好い。
冴えない男二人(内一人はドッペルゲンガーのごとく前後半で交代)が主人公のヴァカンス映画ということでギヨーム・ブラックへの影響は計り知れないうえに(ギヨーム・ブラックと違って男は二人ともリア充。非モテは『オルエットの方へ』の課長くらいか)この理屈のなさ計算の見えなさにおいてはもう不世出だなと。寡作で亡くなったのが惜しすぎる。
前半はパリの旅行会社で営業やってるボナヴァンチュールが嫉妬深い彼女から逃れようとして出会った女性とすぐいい仲になっておきながら、後半はその女性全く出てこない。ボナヴァンチュールの同僚「太っちょノノ」(味しかない)が企画の下見に行きたくなさすぎて代理で登場する弟「プティ・ノノ」が髭がない以外は兄にそっくりすぎて笑う(この人も味しかない。俳優の名前見たら実際は他人らしい)。太っちょノノも後半はほぼ登場しない。前半のダラダラもロジエのバサっとした省略が効いてて私は楽しかった。
後半はこのプティ・ノノが無人島サバイバルのなかで活躍し、だんだん精悍に見えてくる不思議。無人島サバイバル企画をよく知らないまま一人で参加したOL「広報アシスタント」(名前が出てこずずっとそう呼ばれてる)の人は『オルエットの方へ』にも出てた。彼女がプティ・ノノにうっすら惹かれていくのが日記のモノローグで語られる。一昼夜かけてやたら険しく深い山や滝のあいだを抜けたら、船の停泊してるのが廃車やゴミがたくさん打ち上げられてる浜というのがまた可笑しい。
先に無人島へ下ろされたプティ・ノノと広報アシスタント、船から海に飛び込んだボナヴァンチュールの行方を追って海をずっと見てるんだけど、夕暮れ前だった波がだんだんピンク色に染まり浜にいる二人のシルエットだけになっていくさまが美しい。
いまのところ私の中では『トルテュ島の遭難者たち』と『オルエットの方へ』がロジエ作品の双璧。『アデュー・フィリピーヌ』も好いんだけどやっぱり『オルエットの方へ』が。
今回のジャック・ロジエ特集、劇場初公開作品は嬉しいけどなぜ『オルエットの方へ』をかけてくれなかったのか……そして願わくばデビュー作『新学期』も観たかった。再ソフト化も期待してるんですけど『オルエットの方へ』!『トルテュ島』もソフト化希望!