みーゆー

市子のみーゆーのレビュー・感想・評価

市子(2023年製作の映画)
3.9
証明


普通に生きるって改めてめちゃくちゃ難しすぎると思った。名前があって、生年月日があって、誰から産まれて誰の元で生活をする。当たり前に最初から与えられていたものは結局普通であって、その普通からめちゃくちゃ遠い人もいる。

好きな食べ物ひとつだってそうだ。お肉、と答えた人間は給料日前だから買えないって現実なんてきっと側にはなくて。味噌汁って答えた人間は「おかえり」って言って温かいお味噌汁が待ってたわけでもない。

突然姿を消した市子の軌跡をなぞって歩くたびに心が重くなる。あのとき、どんなことを思ってその言葉を発したんだろう。あのときの涙は、どんなことを思っていたんだろう。自分が普通でいられればいられるほど、考えてしまう。考えなんて追いつけないくらい、それは壮絶だったんだけど。

生き抜くにはそれしかない。きっとその思いだけで色々やってきたんだろうけどなぁ。やっと掴める!しあわせに!と思ったら絶望が襲ってくる。「最初から」ダメだったんなら、いつが良かったんだ。生きてるだけでみんなしあわせになったっていいのにね。

最後まで気が抜けなかった。結論を出さない終わりにも深みがあってこれはこれで。知らない間に生き抜いてんのかな、美味しいケーキは食っとけよ。それにしても倉悠貴に若葉竜也って市子と男の好みド被りすぎてきっと私とケーキ屋やったらバチバチになるな。と思った。

案外自分に置き換えても、友達のあれやこれなんてそんな知らないんじゃないかなと思った。友達からしてみても、きっと私もそんなもんだ。でもやっぱりさ、「共に生きて、共にご飯食べて、笑って」って生活してるとさしあわせでいてくれなんて思っちゃうんだよなぁ。