みーゆー

笑いのカイブツのみーゆーのレビュー・感想・評価

笑いのカイブツ(2023年製作の映画)
3.8
生き甲斐


取り憑かれた、ってこの116分のことを指してるんじゃないか。ハガキ職人の生き様、いや生き甲斐か。全てを観た。なんとなく、でお笑いとラジオを聴いている。そんな人たちに観てほしいなぁ、なんてぼんやり思った。

これはまだラジオが好きな時間にワンタッチ片手で聴けるような世界じゃなかったとき、テレビ前で待機してアンテナ3本を毎週狙ってるようなとき。わたしでも少し記憶にあるくらいのそんな「地獄で生きてる」話だった。きっと、気付いた時にはもうこの地獄でしか生きられないんだろう。

初めて読まれて、初めて段が上がったあの瞬間

に良くも悪くも取り憑かれてしまったんだろうから。とあるシーンでは「おかしい」と言われたことに対して「褒め言葉だ」と返す。彼の世界では「おかしい」ことは宇宙でいちばんなんだろうな。好きとか、愛してるとか、そんなことは並。おもろいかおもろくないか、その2択に当てはまらないその他。なんとも無様で、美しい気さえした。

人並みのしあわせを掴もうとしたとき、結局辿り着けやしないのか。と悲しい気分にもなったんだけどこれ現実、の話なんだもんね。そりゃ「人間関係不得意」で逃げてるやつが簡単に掴めるもんじゃないか。脇にいる菅田将暉ってこんなに良かったっけ、ってふと気付かされるくらいかなり揺さぶられて印象的なシーン。

作中漫才、めちゃくちゃおもしろくて声抑え切れず笑っちゃったんだけどこれ漫才指導のコンビを知ってそりゃおもろい!なんだそれ!と納得した。M-1おめでとう!
エンドロールでの「あんたここにおったんかい!選手権」も出来ますので我こそは!のかたは是非。

カイブツなんてのは案外自分にも当てはまるのかも。それを世間体とコミュニケーションと何かで蓋をして。ピンク髪の「羨ましいよ」なんて烏滸がましいけど、そうなのかもしれないなぁ。

***

2023.12.12 ユナイテッドシネマ豊洲
完成披露上映会

登壇者全員が「岡山天音の芝居」を魅力的すぎる、次のステージに行ってる、と褒めちぎって本人が照れている様子が印象的だった。

いや、バケモンじゃねーーーーの……
何年も岡山天音さんの演技を観て楽しませてもらってるけど、ここまで独壇場なのも久しぶり。。。

あまりにも「かっこ悪くて、醜くて、すっげえ無様」なツチヤの「美しくかっこよく見える瞬間」が上手すぎる。

「ここまで来れてよかった」そんな言葉で締め括ったのも惚れ惚れとしてしまうくらい、そんな演技だったなぁ。これからの未来も、楽しみでしょうがないよ。