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市子のcanaのネタバレレビュー・内容・結末

市子(2023年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

遅ればせながら映画初め!
昨年から気になっていた「市子」。

最初から最後まで引き込まれてしまった…!

市子の恋人である義則と市子を調べる刑事目線で部分的に彼女の過去は明らかになっていくものの、実際に起きたことも市子の心情も細かい描写はなく、想像するしかない。
でも「戸籍」という生まれて初めて得られるアイデンティティさえ最初からなかった彼女の絶望がどれほどのものだったのかは、それを当たり前に手にできた私たちには到底理解し得ないということなのだろう。

彼女を救うことで〝唯一の味方〟になりたかった彼と嫌な過去の記憶は関わった人ごと忘れたい市子の考え方の違いもまた、その根底から来ている気がして皮肉だった。

市子はただ好きな人と温かい寝食を共にしたかった、それだけだったろうに、ひたすら悪い方に連鎖していくのがきつい。
あのシーン後の「ありがとう」はあまりにも残酷すぎる。

杉咲花が本当に素晴らしかった…!
可愛らしい表情と恐ろしい無の表情のギャップがすごい。
婚姻届と共にプロポーズされて涙するシーンは2回流れるのですが、2回目は受け取る意味合いがまったく変わる。
1回目では微笑ましいだけだったのに2回目は盛大につられ泣きしてしまいました。

若葉竜也も本当にこういう役がぴったりで(褒めてる)好演。
余談ですが、映画のバイクシーンは事故ることが多いので無駄にビクビクしてたけど最後まで事故らなくてよかった笑


明治時代(!)から続いていた離婚後100日・300日問題の起因である民法は今年やっと改正されるそうです。
家族=血の繋がりを一番に考える根深い日本の弊害がこんなところにも出ていたのかと思うと、そういう意味では胸糞だった。

自分はたしかにここに存在しているのにそれを証明するものがないということは、死んだらただいなかったことになってしまう。
生きることでしか自分の存在を記すことができないのはつらすぎる。
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