このレビューはネタバレを含みます
52ヘルツの声で泣くクジラたち
それは愛(いとし)であり、きなこであり杏さんである。
その声を聞くことができるのは
互いに同じ周波数で泣くものたち同士だけなのかもしれない。
私は誰かが救いを求める声に気づけるだろうか、気づいてもそれを受け止めて寄り添うことができるか、出会ってみなければ分からない。
いつか同じ声で泣く魂のつがいに出会えた時その人を支えるだけの力と余裕を持っていたい。
今回も杉咲花の秀でた才能をスクリーンで見ることができた。それってただ演技が上手いとかじゃなくて登場人物や演じる役に寄り添い近づくための努力なんだなって改めて感じたし、志尊淳がとても良かった。ハマり役！
きなこの腕を握ってきなこが柔らかいねと言った時の表情や仕草、母親にカミングアウトする時の表情が切ない。とても良かった。
ただでさえ児童虐待や育児放棄、自宅介護、繊細なテーマを扱っているのに、ジェンダーも加えるとなるとさすがに複雑化しすぎやしないかと心配したけれど、光を灯してくれるラストで救われた。
家族や恋人も大切だけれど
形よりも自分の幸せを心から願ってくれる人を信じて
手を取るべきだなって
そういう人を見つけて愛せる自分になりたいと思った。
いまは無理かもしれないけど
誰かの人生を少しでも照らせるような人間になりたいなって思う。
クジラの声って聞くと不安を覚えるから怖いけど
52ヘルツで鳴くクジラの声は綺麗だったなー。
人間からしたら52ヘルツのクジラの声は
誰にも届かなくて「世界で最も孤独なクジラ」と思うのもむりはないけど
もしかしたら当のクジラにしてみればそんなのはなんてことないことで、どこかに存在する同じ種のクジラとの交信の手段だとしたら悲しくはないのかもなって勝手に妄想してみた人間です。
サウシーの優しい声が響いた静かな帰り道
銀だこ買って家路に着きました
