てっちゃん

NO選挙,NO LIFEのてっちゃんのレビュー・感想・評価

NO選挙,NO LIFE(2023年製作の映画)
4.3
元気がないとき、己の限界にぶつかったとき(根性論の話ではない)、政治に対し私は関係ないと思っている人たち、単純に面白い映画を観たい人たち、つまりはあらゆる人たちに観て欲しい作品ということ。
そんな押し付けできないので、ここで書き殴りをしているわけです。

本作は、フリーランスライターの畠山理仁さんという方が主人公。
私自身、ダースレイダーさんとプチ鹿島さんのYouTubeチャンネル「ヒルカラナンデス」で畠山さんのことを存じ上げていたので、これは観なければ!と思っていた作品だったのだ。

畠山さんの選挙取材のルールとして、
「候補者全員に取材する」というものがあるのだとか。
どういうこと?と思われるかもしれないが、畠山さんが言うところのインディーズ候補(既存政党ではなく己の力で選挙に出る人)にも取材するというのだ。

普段って大手メディアが取り扱うのは既存政党の人たちが多いのが現状であると思う(それも二世議員だと尚更に)。
薄らと思っていたことだけど、投票する人の何割かは、”人”を見ないで”政党”を見て投票しているように感じていた。
同じようなこを畠山さんも語っていた。
同じ供託金を支払っている人たちなのだから、平等に取材して平等に取り上げるべきだという主張から、畠山さんのルールは存在するのだ。

でもそこには現実的な問題がある。
”儲け”である。
こんな取材のやり方をしていては、儲けが出ない仕事だってあるし、仕事先によっては交通費すらもらえないときだってあるそう。
これと葛藤していく畠山さんを映してもいく。

印象に残ったシーンとして、全候補体当たり取材をしていく中でどうしても会えない人がいた。
その人は党の仲間の応援で飛び回っており、本来の自分の選挙区での活動ができていなかったのだ。
そこで畠山さんは車で高速道路を走らせる。
そしてお尋ね人を見つけ、取材する。
その間30秒くらい!それでも畠山さんは「来てよかった」と語っている。
畠山さんがその人に取材しているとき「こんなところにも来ているのね」と声を掛けられていた。

また別の人の囲み取材のときには、その人は厳しい表情だったが畠山さんの質問が来ると、畠山さんに視線を合わせて真摯(最近多用されがちな真摯ではなく、本来の意味での真摯)に対応していたのが印象的。
つまりは、ずっと地道に真面目に取材しているからこその結果だと思う。

畠山さんの行動力は異常である。
エネルギーに溢れている。
しかし家庭があるし、そろそろ50歳に差し掛かる(全く見えない)、などなどの苦悩があり、このような取材スタイルは引退かもと悟る。
卒業旅行と称して、沖縄県知事選の取材へ旅立つ。
そこで、畠山さんが見たこと、感じたこと、、、これからの自分について。

これは熱いな、、と思いながらずっと観ていた。
もっと畠山さんの行動は世に知られるべきだと思ったし、選挙権があるのに選挙に行かないなんてもったいないと思うし、自分たちで政治は変えられる可能性があると(と思いたい。腐りきっている日本が少しでもよい方向にいけばと思う希望ですよね)感じられた。

やたらとでかい声で煽る候補者がいる(特定の熱烈な支持者を掴みとりたいから)。
さらっととんでもない差別発言をする候補者がいる。
汚職によって離党したが支持者に愛されている候補者がいる。
大金を使って選挙活動しているが孤独を感じる候補者がいる(開票後の幟が乱雑に詰め込まれていたのを見て畠山さんが言った言葉が忘れらない)。
話すのが苦手だからと歌を歌う候補者がいる。
、、、さまざまな候補者がいることが分かる。

そんな候補者たちに平等に接し、ときに納得いかないときには意見を言い、優しい眼差しで見つめ手を差し伸べたりもする。
つまりは畠山さんは人が好きなんだ。
そんな畠山さんを見ていて、とても元気をもらえた。

少し背筋がぴんとなって、元気になって、初めて行くラーメン屋に入って、常連臭がすごいお店で孤立しながら食べて、2度と行くもんか!と誓った帰り道でした。
てっちゃん

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