みほみほ

雪山の絆のみほみほのレビュー・感想・評価

雪山の絆(2023年製作の映画)
3.9
🗻2024年58本目🗻(吹替)

息を飲む程美しい星空と雪を纏った壮大な山々。普段なら見惚れるはずの自然美が、こんなに虚しく無情にそして残酷に ただそこに佇む。取り残された人間は 必死に生きる術を探す。一人二人と亡くなる中での生きる為の過酷なサバイバル。

「生きてこそ」を連想とさせる内容だと思ったら同じ事故を扱った作品でした。

「生きてこそ」を観てから4年程経過しているので、事細かな内容は覚えてはいないが「生きてこそ」が生きることを崇高に感動的に描く美しい名作なのだとしたら、本作は人物描写をしっかり描き出し、そこで懸命に生きた人々の葛藤や生きる為にそうせざるを得なかった あの決断までの流れなどを、ゆっくりじっくり観せてくれる そんな作品。

中心となる焦点が違うので、「生きてこそ」と比較しても全体の見え方も異なり新鮮。何より生存者に寄り添った内容になっているのが素晴らしいと思うし、これだけの人数がいて顔も名前もはっきり暗記出来たわけではないにも関わらず、なんとなく全体像が飲み込めるようになっているのが嬉しい。

事故や雪山の大自然の脅威の映像の数々は…ダイナミックで息を飲むような迫力。事故のシーンは実際飛行機事故に遭った人は観れないと断言出来る程にリアルで、飛行機事故で信じられない潰れ方をしたご遺体などが何故そのような状態になるのかを可視化しているかのようで…思わず震えながら涙が滲んだ程。

この撮影方法についてはドキュメンタリーに細かく描かれていて見応えがあったので、併せて「雪山の絆: 僕らは何者だったのか」も観て欲しい。

本作でヌマにスポットを当てた意図は、生き残った人もそうでない人も変わらず、そこで必死に生きたことを全世界の人々に訴えたかったのではないかと強く感じた。どうしても生き残った人間にスポットが当たるけど、そのコミュニティの中で誰がどんな役割をしていたかを知れる本作では、生存者だけでなく帰れなかった者達の心情をも汲み取ることが出来る描かれ方をしているので、丁重に扱われている感じが伝わりホッとする。

遠征隊のロン毛のお兄さんの方が「生きてこそ」でイーサン・ホークが演じた役柄だが、最初はかなり衰弱していたのにみるみるうちにたくましくなっていくのでびっくりしました。

「生きてこそ」が朧気な記憶なので、本作で山を超えるシーンに新鮮に驚愕し度肝を抜かれ、こんな過酷な思いをしなければ ここで必死に生き抜いた命も報われなかったのかと思うと、自然の恐ろしさを改めて感じると共に、死ぬ気で歩みを止めなかった遠征隊の不屈の精神力に恐れ入る。本当に生きてて良かった。

最初に本作を見始めた時は、どうしても「生きてこそ」の対抗馬のように見てしまい、ちょっと複雑な気持ちで捉えている自分がいましたが、雪山でのサバイバル生活が始まるとそんなことは頭からは消え没頭していました。

72日間にも及ぶサバイバル生活の絶望や微かな希望、そして大半を占める過酷な雪山で耐え忍ぶ時間…そういう間の部分もじっくり描いているのは好感持てたし、寝る前とかに見ていたら寝てしまうくらいの静けさがリアルで、映画的に感動的にするのではなく、事故に遭い雪山で遭難した皆さんが どんな風に生き抜いたのかをじっくり知れる貴重な作品だと思いました。

ヌマを演じた俳優さんの眼差しが印象的でした。


以下、
「雪山の絆:僕らは何者だったのか」レビュー
(⚠️Filmarksにはまだ載ってない為)

🗻2024年59本目🗻(字幕)

有名どころのキャスティングはなく、最初は緊張感のなかった演者達が過酷な撮影で遭難者になり切っていく姿は見ものでした。Netflixの資金力とサポートも本当に凄いけど、ハイテク技術とさらには俳優陣の努力が素晴らしい。

子供のようにはしゃぎ回る演者を観ていて、作品との温度差を感じる瞬間もあったけど、雪から這い出るシーンの本気度が凄くて驚きでした。

俳優魂も凄いし、いい作品を撮ってやろう!という制作陣の熱意。そして生存者の方の生の声と、短いながら濃度の濃い内容で見応えMAX。
みほみほ

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