ピロシキ

アメリカン・フィクションのピロシキのレビュー・感想・評価

アメリカン・フィクション(2023年製作の映画)
4.2
声出して笑えるシーンの後に、すかさず訪れるシリアスなシーン。喜劇は悲劇と表裏一体、これがブラック・コミュニティの現実だ……ってちょっと待ちなさい。アメリカン・フィクションというタイトルを通して、逆説的にあぶり出すアメリカのノンフィクション。捻り効かせまくってる。

主人公は医者一家に生まれ、実家は大きく、(Mr.をつけて自分を呼ぶような)お手伝いさんまでいる。母を呼ぶときはMumでもMommyでもなく、Mother。自分は小説家、出会った彼女は弁護士。周りも皆ウィットに富んでて言葉を知っててジョークも高尚……主人公がいかに「やんごとない」育ちをしてきたかがわかる描写はそこら中に。だがしかし、常にうまくいかない。彼は黒人、ただそれだけで。

最後の最後まで「皮肉はたっぷり効かせるが、あからさまな風刺はしない」という、ある種の気高さのようなものを感じる。音楽まで、皮肉に満ちている。アカデミー音楽賞にもノミネートされた本作は、エンドクレジットも洒落たジャズで綺麗に締まる。ヒップホップは……流れない。
ピロシキ

ピロシキ