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アタラント号のalmosteverydayのレビュー・感想・評価

アタラント号(1934年製作の映画)
3.5
4Kレストア版。11月にこれもやはり4Kの「東京物語(53)」を観てしまっているせいか、映像の美しさに目をみはりながらもやはりあちらには及ばない…とわりあい冷静に受け止めることができました。こちらが初見だったらもっと新鮮な驚きがあったはず。戦前から戦後にかけて、撮影技術も大きく進化してきたことでしょう。

にもかかわらず、いま見ても特に革新的と思える技法やハッとさせられる描写がそこかしこに。序盤で若い新婚カップルが「水の中で目を開くと好きな相手が見えるのよ」なんて言ってじゃれ合う他愛もない場面が、まさか終盤あんなふうに伏線として回収されるなんて。水の中の表情を捉えたカットがあんなにも鮮明だなんて。離れ離れのふたりが互いを求めてベッドの中で胸を焦がす場面が、あれほどまでに狂おしくもセクシーだなんて。ふうう、数え上げたらきりがないわ。

甲板を這うように進む目線をカメラのずっと先に置いてみたり、レコードの盤面を指でなぞって楽器の音を重ねてみたり、印象的な場面は他にもたくさんありました。泥棒に遭う場面とその前後でコートの色や帽子の有無が違うのはなんでなんだろ?と少々不思議に思ったりも。あとは、とにかく猫が可愛かったです。猫好きさんにはたまんないと思うな、これ。おやすみなさい。
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