LalaーMukuーMerry

勝手にしやがれのLalaーMukuーMerryのレビュー・感想・評価

勝手にしやがれ(1960年製作の映画)
4.0
1950年代末~60年代半ば頃のフランス映画のムーブメント、ヌーヴェルヴァーグ(新しい波)の巨匠ジャン=リュック・ゴダールの初鑑賞。特に有名な「勝手にしやがれ」から。
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そもそもヌーヴェルヴァーグとはなんぞや? その頃出てきた若手映画作家の作品をさすらしいが、その特徴は1)編集(カット割り、録音)、2)アドリブ演出、3)ロケ中心、とのこと。
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警官殺しの罪で指名手配された主人公ミシェル(=ジャン=ポール・ベルモンド)の、アメリカ人の恋人パトリシアとのラブラブ生活を描いたお話、と言って間違いではないが、だいぶズレた感じがする。悪く言えば刹那的(車と女とバイオレンス)、よく言えば誰にも束縛されない自由人。批判的な目線は微塵もない。BGMも洒落ていて、悪人なのだけれどなんだかカッコいい(女性目線でみると大分違って見えるような気もするが・・・)。ラストはちょっと意外な展開で心に引っかかる。う~む。なんじゃこれ。町山さんによれば、この映画はクエンティン・タランティーノに多大な影響を与えたらしい。なんだかわかる気がする。けど、ストーリーはたぶん重要ではない。
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今のTVや映画の映像に慣れた目からすれば、驚くほど新鮮というわけでもないが、当時としては画期的な作品だったようだ。特に当時は禁じ手だったクイックカットをたくさん取り入れた編集手法は、映像にそれまでなかったテンポとスピード感を生み出し、後のCMやミュージックビデオ制作に多大な影響を与えた。
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とりとめない会話も、その間が徹底的にカットされていて、マシンガントークのように意味深な言葉がポンポンと挟まれる。アドリブの会話や演出とあいまって、スピード感ありすぎてついていくのがしんどいくらい。編集の魔力(カットの呼吸)がゴダールの真骨頂。
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小さいカメラを使って外に出て、自然光の下(照明さんなど使わずに)、好きなようにゲリラ的にアドリブで撮る(うるさい撮影監督などいらない)。そして一番面白い編集でスタイリッシュに映画を仕上げる。まさに、勝手にしやがれ状態の映画製作・・・。ゴダールの始めたこの手法に世界中の映画製作者たちはとりこになって、瞬く間に世界がマネし始め、その後の映画に大きな影響を与えた。だからこそ「勝手にしやがれ」はヌーヴェルヴァーグの金字塔なのだ。
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(町山智浩さんの解説をかなり参考にさせてもらいました。町山さんありがとう)