LalaーMukuーMerry

レ・ミゼラブルのLalaーMukuーMerryのレビュー・感想・評価

レ・ミゼラブル(2019年製作の映画)
4.0
同名タイトルの名作とは、基本的に全く関係なし。関係あるのは、話の舞台が名作と同じパリ郊外モンフェルメイユということと、ラストにでてくる言葉が名作の作者ビクトル・ユーゴーのものということだけ。

「悪い草も悪い人間もない、‬育てた者が悪いのだ」

モンフェルメイユは、今や北アフリカ系移民たちの貧民街になって治安が悪くなっている。その裏世界で幅を利かす男、その街で育った少年・少女たちの様子、街を取り締まる警官たちの嫌~な態度・・・。 監督(ラジ・リ)の両親はサハラ砂漠の内陸国マリの出身、監督は3歳の時この街にやってきて、ここで育ち今も住んでいる。この作品で描かれていることは、彼が経験してきた、移民の目を通してみる日常なのだ。フランスでは移民の増加によって、人種による差別や対立が顕在化した。Black Lives Matterのような改革運動などは全く出てこず、どこにも救いがないまま終わるので、暗~い気分になる。
          *
誰の親が悪いとか、この作品から何か答えが導けるのだろうか? 親が悪くないとは言わないが、親をそうさせた社会(システム)の方がたぶん悪いのだ。社会のおかしなところを改める気のない(現状維持を望む)既得権勢力と結託している政治家も悪い。
          *
こういう酷い現実の暴露系(問題提起系)の作品も大切だが、お手本系の作品の方がもっと大切だと思っている。政治による社会の改革まで待てないと、地道に頑張って社会を少しでも変えることに貢献している人たちもいるから、そういう人を描いた映画をこの次は見たいという衝動に駆られる。(例えば「フリーダム・ライターズ」(2007/US)とか「奇跡の教室」(2014/FR)など)。