LalaーMukuーMerry

ペパーミント・キャンディーのLalaーMukuーMerryのレビュー・感想・評価

4.3
社会人になる頃(高校卒業)から20年余りの、ある韓国人キム・ヨンホ(=ソル・ギョング)の悲劇の人生を振り返って描く作品。この作品は、やはりある程度人生経験を積んだ人の心にこそよく響くことでしょう(もちろん想像力豊かな人なら、若い世代でも十分響くかもしれませんが…)。恋愛、別れ、結婚、子育て・・・、岐路に立った時どちらの道を選ぶのか? 選んだ道は正しかったのか? 別の選択をとっていたらどうなっていたのだろう? 誰しも、そういうことを考えないわけにはいかないから。
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話は、ある同窓会の集まりから始まりますが、とても異様な感じ。その理由はキム・ヨンホに数日前に起こった破局的な出来事が描かれて、これが直接の原因だとわかります。でも、なんでまたそんなことになったの?
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その疑問に答えるように5年前のエピソードが描かれて、これが間接的な原因だったとわかるのです。 でもそうなる原因はなんだったのか? ・・・てな具合でどんどん時代をさかのぼっていき、その時々のエピソードが描かれていくのですが、若くなるに従ってトーンが明るくなっていって、(根拠のない)希望と自信に満ちていたのが、見終わって振り返るとなんとも切ない。
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時代は1979~1999年、前半は民主化前、後半は民主化後の韓国。人間としての普遍性と、特定の時代に翻弄された人間という特殊の面と、両方が描かれてます。1980年のエピソードはおそらく光州事件、その鎮圧に何も知らずに駆り出された徴兵制度下の兵士のやるせなさ、1987年のエピソードは民主化前の警察による酷い尋問の様子がモチーフになってます。列車から見えるレールの風景によって時代がさかのぼっていく。そして冒頭とラストのシーンがつながったとき、人生の悲しさ・虚しさ、を感じずにはおれない巧みな演出はみごとでした。
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かなり評価が高い作品ですが、わたし的には主人公と恋人・妻との関係性、なぜそうなったのかが釈然としない感じでした。だから、あまり好きとは言えないです。でも、描きすぎない方が想像を膨らませられるし、悲劇的な方が否応なく考えさせられるから、(決してお手本にはならないが)これでよいのだとも言えます。